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高校生活も2年目を迎えると、たるみが出てくるだろうか。遙は、ちゃんと学校に行ってくれるだろうか。去年のように遅刻や早退を繰り返したりしないか。
そんな母親のような事を思っていたが、どうやらそれは杞憂で終わったようだった。
あれから1年と少し。
紆余曲折ありながらも、渚と再会し、凛と再会し、そして…怜と出会い、水泳をまた始め、県大会で勝負するといい、練習に励んでいる。
いままでの遙からは考えられないほど活力があって、いいとは思う。
それと同時に、真琴は酷く不安だった。
あの日滲んだシミが、少しずつ心を浸食している。
…いつかくると思っていた別れが、すぐそこまで迫っている気がして。
そんな事はおくびにも出さずに、そばに居たけれど。


「海…」
正直、怖い、と思った。
でも、みんなが、遙が行きたいというなら、自分の気持ちなど、どうでもよくて。
結果は、真琴は何も出来ず、遙と渚に助けられた。
あの時、遙が真琴の声に気付いていなかったら…と思うだけでぞっとする。
結局、嫌われたくないだとか、みんなの為だとか言って、自分の気持ちを吐露したり、恐怖を和らげてもらったり、何かをしてもらった記憶の方が残っている。
情けなくて、仕方なかった。
更に広がっていく不安、置いていかれてしまうような感覚。
前を見ている遙に、置いていかれてしまう…?
確かな恐怖に変わってしまった瞬間だった。


ここ最近、真琴の調子がおかしい。
最近殊更にそれが目立ってきた為に気付いただけであり、実際には随分前から真琴の様子は平常ではないのだが、ようやく遙が気付いたようだ。
例えば、真琴を抱いている時。
縋るようにぎゅっと頼りなく抱きしめられたり。
例えば、ふと目がかち合った瞬間。
何かにおびえるように笑いかけられたり。
それが気に入らないし、酷い違和感を覚えるのだ。
いつもならば、真琴は好きだという目で遙を見てくれるのに。
目線で好きだと言ってくれるのに。
遙の熱が愛おしいというように自分の熱と解け合うように抱きしめるのに。

それに、最近妙に抱かれる事を望むようにもなった気がする。
今までは遙が誘ってばかりで、恥ずかしいと拒否していたのに、最近では真琴が誘って行為を始める事が多くなった。
けれどそれは気持ちいいから、とか、遙が好きだから、というよりも…何か違うような気がする。
それに気付いていながらも、真琴に誘われると内心嬉しくて仕方なく、そのままの勢いで何も考えずに掻き抱いてしまっていた。
けれど、これはおかしすぎる。
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