1009 00:54 more

うるさいと思ったことなんてなかった。
「ハルちゃん。」
そうやって俺を呼ぶときの真琴の声が心地よくて、「ちゃん」付けこそ嫌ったもののあいつの声が聞こえないと落ち着かない、そのくらい、そう、水と同じくらいに、大切だと気づくまでに、案外時間はかからなかったような気もするが、それを伝えたのは、高校に入る少し前だったか。
自分でも本当にぶっきらぼうに、いつもの調子でぼそりと伝えたものだから、なかったことにされるのではないかと思うほど直後の真琴の態度はいつもどおりだった。…直後は。
「へぇ………って、へ!?」
まったく今でも笑い話にもならないほどそのときの真琴はまぬけだった。し、かわいかった。
その日が、真っ赤な顔で、目は泳いで、俺のほうを見れないといったようにうつむいて、小さく、「俺も」とつぶやいた真琴と、いわゆるところの「お付き合い」を始めた日でもある。
伝えなくとも存在する何かというものはある。けれど明確に関係が変わって、最初は戸惑ったが、それでも真琴と俺の根源が変わることはなかった。
が、まあすることはする。
「…ね、ねえっ…おばさんに聞こえたりとかしない…?やっぱりやめ…ん…んぅ…はるぅ…だ、だめだって…ぇ…やっ」
かなり長い付き合いでも、こいつがここまで流されやすいということも、無垢なことも、俺は知らなかった。
もそもそとまだ着せられているといっていい制服を脱がしていく。明日は体育もない。多少痕を付けてもそこまで咎められはしないだろう。というか、痕を付けられるような行為に及ぶんだってこと、ホントに分かってるんだろうか。
「真琴、だめならしない。お前が決めろ。あと、おふくろはいま親父のとこ。」
「…うぅ…いじわる…。はる…言わなくたって、わかるだろっ!」
チョロい。チョロすぎる。ほら見ろ本当はしたいくせに。
確かに言われなくたって分かる。お前の考えていることなんてお見通しだ。
初めてキスした時だって、したいって顔に書いてあった。今も同じような顔してる。
…だが、ここは言わせてみせる。いつだって俺がリードしてきたんだ。
「お前が言わなきゃしない」
こう言い放ち、脱がしかけた制服を整えてやった。…泣きそうな顔をされても困る。
「はるっ…ハル俺、…おれぇ…し、した…い…」
5分ほど経ったところでようやく口を開いた真琴は、そういって俺の胸に抱きついてきた。
どう考えても真琴の方がガタイがいいんだから、押し倒される形になったが、真琴のほうからそれ以上の手が伸びることはなかった。(正直今もあまりない)
これ以上責め立てるのもさすがにかわいそうだし、真琴の気が変わらないうちにことに及んでしまおうと、せっかく整えてやった制服を再び脱がしにかかる。
押し倒されたのが気に食わなかったので、ガバっと起こしあげてそのままの勢いで押し倒してやった。
「あ…や、やさしくしてね…?はる…すき…好きだよ…」
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -