▽誰にでも隙だらけ(4/24〜5/6)
「今日はダブルトレインに乗らないで帰っちゃうの?」
バトルサブウェイから足早に帰ろうとした彼女へ、後ろから声かけた。
ビクッと肩を跳ねて驚いて、顔を引きつらせながらボクに振り向いた。でも、そんな引きつっていた顔もボクの顔を見るなり緩んで、安心したかのようにはんなり笑った。
なんで、笑っていられるのかな。彼女みたいな子の事をなんていうんだっけ…?
「すみません、本当はクダリさんのダブルに挑戦しようと思っていたんでけど、ちょっと…あの、気分が動揺してしまっているというか」
「見てたよ−、キミがバトルサブウェイの車掌の一人に迫られてたとこ」
「えっっ」
みるみるうちに顔を真っ赤にさせて、きょろきょろって周囲を見渡して動揺してる。
そう、言葉の通り迫られてた。ダブルに乗ろうってホームで待っていた彼女のとこへ車掌の一人が声かけて、ダブルよりもお茶でもしようって手ひっぱって無理矢理つれてこうとしてた。
彼女は、そういうのに免疫がないのか、かなり動揺しながらもその手を振り切って逃げて…今に至るんだけど。
あの車掌、前からこの子の事…見てたんだよね。ボク知ってた、ボクだってこの子の事見てたからなんでもしってる。
「今回振り切れたから良かったけど、次同じ事起きたら危ないよ。気をつけた方が良い」
「でも軽いナンパのようなものですし、そこまでは」
「連れてかれそうになった場所気づいてた?喫茶店なんかじゃなかった、車掌達の仮眠室だよ、あの時間じゃ誰もいないよ」
「え…?」
ここまで言って、身の危険教えてもなんの話しなのかと的を得られていない純真な瞳が何度も瞬かれた。
うーん…、だから、彼女みたいな子の事なんていうんだっけ…な。
「今回だけじゃなくて、この前はキャメロンに腰触れてた」
「あれは転びそうになったから支えてもらっただけで」
「その前はカズマサに手握られてた」
「カズマサさんが迷子になっていたから案内しただけですよ?」
「ノボリの、肩に寄りかかって警戒もなく寝てた」
「最終列車逃しちゃって途方にくれてベンチに座っていたら気がついたら寝ちゃってて、気がついたらノボリさんが隣に座ってて肩を貸してくれていただけですよ。逆にお世話になった件です」 本当に…、彼女のこういう面がすっごく可愛いと思う反面恨めしくもなるとき、ある。
彼女に手をさしのべる男達の裏の顔なんて考えないんだろう、下心もって声かけてくるなんて思ってもいないみたい…。
「キミはこれからもそのまま、変わらないの?」
「へ?かわら…ないと思います……けど?」
何故変わる必要が?と言わんばかりに首をかしげられて、なんだかボクの中で、いままで我慢していた糸が音をたててぷつんって切れた。
変わらないなら、その変わらない部分にボクがつけこんじゃっても、いいよね。
「うん、なら変わらない今のままのキミでいて!」
「は、はい?」
「そうでいてくれた方がボクも好都合!」
「??、それはどういうい、」
言葉を言い終えるよりも早く、彼女の手を引いて無防備すぎる彼女へ口づけた。
間近で、キスへのルールなんてお構いなしでただ驚きで体をかたくして目を大きく見開いて固まってる。そんな顔を間近で、目を細めて見てるボクも大概ルール違反。
人目なんてお構いなしに、野次馬の声なんかも無視して愛しいそれを味わうだけ味わってから触れるだけのそれからゆっくりと離れて…固まって動けないでいる彼女の、やさしい香りがする髪をサラリと撫でながら耳元でわざと、吐息混じりにささやいた。
「隙だらけ、
キミが変わらないでそのまま隙だらけでいるっていうんなら、ボク何度だってこういう事しちゃう」
「え、今…?!え?!なんども?!」
「しょうがないよ、だってキミ…」
誰にでもスキだらけだからね
(みんなだけじゃなくって、ボクにも隙みせちゃったね。
誰にでも隙見せるってよくない、ボクその隙今後絶対見逃さないよ!)
(なっなっなっっ!?)
(もっかいする?あ、うん、答えなくていいや、勝手にするから)
(え?ま、待ってくださ?!クダリさっ、きゃあーーーー?!)
[無防備なきみに恋をする5題]より
お題提供様 − 確かに恋だった
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