「ボクを怒らせたの、だぁれ?」
「あーーーもうっ!!君たち邪魔!!」
ナマエの居場所が分かった、
だから急いでカミツレちゃんのジムにやってきたっていうのに、なんでか挑戦者扱いされちゃって、最奥にいるカミツレちゃんの元へ行くのを妨害するかのようにわらわらと、ジム所属のトレーナー達がボクに挑戦を挑んでくる。
もう何人倒しただろう?数なんてとっくに数えるのやめちゃったけど、本当しつこい…!これ絶対カミツレちゃんに命令されてボクの足止めしてる!!
「いい加減にしてよ、ボク自分のポケモン返してもらいに来ただけだって言ってる」
「申し訳ございませんサブウェイマスタークダリ、
正面玄関から入室された以上いくら貴方でも挑戦者としてもてなさなくてはいけません。
カミツレ様もそういった判断を下されてます」
「だから!お客様として来たってカミツレちゃんに伝言してったば!!」
「カミツレ様は既に他のお客様を接待中ですので無理です」
このっっ分からず屋!!
淡々とした口調で説明するエリートトレーナーに段々と苛立ちも募ってくる。
挑戦者としてのおもてなし?それって普通一対一で戦うの、普通じゃない?
なんで、ボクは5人ぐらいのトレーナーに囲まれてる?
「クダリ様お相手ですと、いくら我らジムで鍛えた身といえど歯がたちませんので」
「心の中読まないでよ、不愉快」
じりじりって、トレーナー達がモンスターボール片手にボクを取り囲む。
参ったな…これ絶対時間稼ぎされてるんだ。
ジムの構造を改めて確認する、遊園地と隣接してあるだけあってジムの中にはジェットコースターがある。休むことなく起動するそれはジム全体を行ったり着たり、レールの上を機体がぐるぐる、上下いったりきたり…。
電気系の…ジム、か。
ニィって、口元に笑み浮かぶ。
「ひーらめいた!」
そうと決まればって、笑いながらシビルドンとデンチュラ、シャンデラを呼び出した。
いっぺんに三匹呼び出した事で、周囲のトレーナー達からざわめきが生まれた。
なにかおかしい?だってボクダブルトレインの車掌さんだよ?
だいじょぶ、ダブルバトルしかしないから…。
「シビルドン、デンチュラ、バトルお願いできる?」
「シビルルッ!」
「ギチギチッ」
二匹とも「任せて!」って言った見たいに喉を鳴らして答えてくれて、目を闘志で血走らせながら臨戦態勢にはいった。
「ぼくいま、ちょっと怒ってる。君たち邪魔するから」
ボクにくっついてくるシャンデラの頬を撫でながら、シビルドンとデンチュラの間に立って、相手のトレーナー達へ手をかざした。
「君たち、電気タイプ使いでしょ?
同じ電気タイプでも育て方でどれだけの差がでるのか……そのプライドへし折ってあげる。
シビルドン!デンチュラ!全速前進!!」
風をきる、ボクの号令で勢いよく飛び出していく二匹、それに続くかのようにトレーナー達もポケモンを呼び出す。
立ちはだかるは、エモンガ三匹と、シママ二匹!
「シビルドン、エモンガに10万ボルト!」
ボクの命令で電流を溜めるシビルドン、それをほくそ笑んで見守るトレーナー。電気タイプに電気技は【いまひとつ】の威力だって思って油断してるんだろうね。
ボクのシビルドン、馬鹿にしないで。
ドォンッ!!
「えもーーーっ?!」
「エモンガ!?」
ああ、やっぱり。あのエモンガの特性は静電気、なら……効くでしょ?
ボクのシビルドン、地下でどれだけ電気をもてあまして退屈してると思ってるの?
痺れて目を回しているエモンガに「ご愁傷様」って笑いかけてから、次にデンチュラへ命令。
「エモンガ達が麻痺してる隙に連続斬りで一掃!」
「キィ!!」
「させない!!エモンガ!こうそく移動で回避!!」
エモンガは麻痺して鈍くなった体に鞭を打って、命令通り高速移動!空中を目にも止まらぬ早さで駆け抜ける。それが三匹同時に。
「シママ!お前達はシビルドンへニトロチャージ!!」
「シマ!!」
シママは身をかがめ、地面を蹴り上げて技の発動体制に入る。それがチャンスだと思ったのか、エモンガのトレーナー達もエモンガへ電光石火を命令した。
素早さが低いシビルドンを、素早さが有利な技で先に潰そうって考えらしい。
「ふふ…ぞくぞくする…!!
君たちさすがジムのトレーナー達!!瞬時の判断がいいね!」
でも…。
口元に指先をあてて、シー…って息を吐く。
あ ま い よ 。
「デンチュラ、天井へ移動!シビルドン、全員迎え撃って」
「な!?」
デンチュラは地面を蹴って蜘蛛らしく、天井へへばりついた。シビルドンは微動だにせずにその場で待機。その余裕綽々な顔、大好きだよシビルドン。
対してトレーナー達はボクの命令が理解できずに正気じゃないと動揺を隠せない、でも命令を撤回する事なく、彼らのポケモン達はシビルドン目がけて飛び込んできた!
「飛んで火に入る……ポケモン達」
笑うの、堪えられない。
楽しい楽しい!
罠に、はまっちゃって。お馬鹿さん、だね!
「シビルドン!ボルトチェンジ!!」
「シビビーーーー!!!!!」
バチバチィッッ!!
シビルドンから電流があふれ出し、それを喰らったエモンガは先ほどのダメージもあって、もう駄目だとばかりに目を回す。でも、シママはさすが、電気を受けてもさらに加速してシビルドンへ突っ込んでくる。
でも、ほら、ボルトチェンジの特徴しってる?
控えポケモンと入れ替わるんだよ。
ボクの肩にとまってじっと出番を待っていたシャンデラと、シビルドンが互いを引き寄せるかのように素早く風を斬って違いの場所を入れ替えた。
シビルドンはボクの足下へ戻り、シャンデラはさっきまでシビルドンがいたバトルフィールドへ。
「ごめんねシャンデラ…
シママを、呪っちゃって」
「シャァン…!」
しまった、そんな声が彼らからかすれて聞こえたけどもう遅い。
シャンデラは黒い渦を己を中心に蠢き出すと、蛇の様に生まれた闇のはどうでシママ達を捕まえた。その瞬間、ドクンって波打つシママの体。毛が逆立って尻尾もはってる。
呪われちゃった証拠。のろいは少しづつ、時間かけて相手のHPを減らす技。
そう、時間かけてね。
これがとどめ、
「デンチュラ、みんなにエレキネット!」
シャンデラがそれを察知してその場から退く、そしてデンチュラはエレキネットを放出!天井にいたからみんな逃げ場無くデンチュラのエレキネットの餌食になった。 動けない、電気ビリビリ、素早さも下がっちゃった。
もう勝敗は、決まったよね?
「ふふ、ボクの勝ち。また20連勝してボクと戦って!
…なんちゃって」
ここはバトルトレインじゃないけど、ちょっとふざけて言ってみたら、トレーナー達はギリッって歯を噛みしめて怒りをあらわにしてボクを睨んできた。
「動きを封じて呪うなんて卑怯だぞ!!」
「サブウェイマスターの癖にっ」
「こうまでしないと我らに勝てないか!!」
「うーん、君たち勘違いしてる」
ボクの元に戻ってきた三匹の頭を撫でて勝利への賛美と、お礼を言う。これ絶対かかさない。
それから、甘すぎる考えの彼らへ、未熟者さん…って笑みを向けた。
「ただバトルするだけでいいならボク最初からイワパレス出してる。
それをこの三匹で応対したの理由ある」
「理由…?」
「ボク最初に言った、怒ってるよって。
時間ないのに足止めされるのってイライラするでしょ?それ…君たちが先にボクにしてきた事だよ」
だから、お返しした。
ボクの、怒りを隠しての口元だけでクスクスって笑う笑みが…驚異だったのか、トレーナー達は顔を青くして一歩、二歩と後退した。
「お返し、だと…?た、ただそれだけの為にこんなバトルをっ」
「仕組んだというの…?この短時間で、こういう結果にする為に…考えて?」
「ボクダブルバトルの車掌さんだよ、バトルでの計算ならノボリにだって負けない自信ある。
それに、大人数で一人相手に飛びかかってきた君たちも大概卑怯だよ?」
だからおあいこでしょ、って振り返りざまに言葉吐き捨てた。
三匹を従えて乗り込むはジェットコースター。
うん、操作の仕方全然わかんない。これ実際自動運転なんだろうけど、壊したらカミツレちゃん怒るかな?
「ま、待て!それに乗ってどうするつもりっっ」
「このまま普通に進んでもまた君たちみたいなトレーナーがわんさか出てきて邪魔されちゃう。ボク、そういうの大嫌い。
それとも、まだボクと戦いたいの?」
「っっ」
面倒だなって、視線だけ相手へ向けると、ひぐって、声にならない声が相手から漏れた。そんなに怯えなくていいのに…。怯えるぐらいなら怒らせないで。
「じゃあ、もしまたボクと戦いたくなったらバトルサブウェイに来て連勝してね!
それと、シママ達の呪いが完成しちゃう前にポケモンセンターに連れて行きなよ。
−お大事に」
最後に彼らに軽く、手を振って目を細めて小さく微笑んだ。
「シビルドン!デンチュラ!ジェットコースターにほうでん!!」
バチバチバチィ!!!!
データにはない過剰すぎる電撃をくらった機体は、エンジンを左右に振るわせながら全速前進!!
ぎゅんっっって暴音響かせながら、火花なんか散らしてレールの上をひた走る!
あっは!!すっごいスピード!!これどこ向かってるのかわかんないね!でも誰も操作も出来ない筈。
なら、ボクがしっかりと狙いを定めていれば、問題ない!!
今、行くからねナマエ!
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