今日もボクは夢を見る。
あの子達に会うために夢を見る。

温かい寝床にうずくまってしばらくすると、
何処からか声が聞こえて来た。
此処はボクの夢の中。
体を見ると、ボクは猫のぬいぐるみになっていた。
ボクは今、あの子が大事にしていた猫のぬいぐるみ。
泣き声まじりにボクを呼ぶあの子の所に駆けて行くと、
あの子は一瞬驚いた顔をしてから、
ボクをぎゅっと抱きしめた。
「よかった、よかったぁ……」
ボクの体に顔をうずめて泣くあの子を優しく撫でてあげると、
あの子はもっと強くボクを抱きしめて、大声で泣き始めた。
「お母さんがすてちゃって……もう、会えないと思ってた……」
ぐすぐすと音を立てながら、
小さな声で呟くあの子をだきしめて、
夢の中でだけ出せる自分の声で、ボクは言う。
大丈夫、ボクは此処に居るよ。
キミがボクを覚えてくれている限り、
此処で何度でも会えるんだよ。
それを聞いたあの子は、ボクの顔を見つめた後、
涙でぐしゃぐしゃになった顔で微笑み、消えて行った。

あの子が消えた場所を見つめていると、
また、何処かから声が聞こえて来た。
体を見ると、今度は兎のぬいぐるみになっていた。
あの子が大事にしていた兎のぬいぐるみ。
泣き声まじりにボクを呼ぶあの子の所に駆けて行くと、
あの子は一瞬悲しげな顔をしてから、
ボクをぎゅっと抱きしめた。
「ごめんね、ごめんね、わたし、あなた、すてっ……」
途中で、また、わっと泣き出したあの子を抱きしめて、ボクは言う。
捨てられた事、恨んでないよ。
たとえ子供の間だけでも、一緒に遊べて嬉しかったよ。
それを聞いたあの子は、
もっと強くボクを抱きしめて、大声で泣き始めた。
今度は何も言わず、あの子を撫でてあげていると、
あの子はにっこりと笑って、大人の姿になって消えて行った。

ボクはまた、あの子が消えた場所を見つめる。
すると、また、何処かから声が聞こえて来た。
何度も何度もボクの名前を呼ぶあの子に、
今度は熊のぬいぐるみになった体で駆け寄ると、
あの子はボクを見て、にっこりと微笑んだ。
「おぼえていてくれたんだね」
かがみ込んだあの子に、ぎゅっと抱きしめられる。
もう、ボクの夢の中にしかいない、大人になれなかったあの子。
「もっともっと遊んであげたかった」
耳元で聞こえる温かくて懐かしい声。
「少しの間だったけど、キミといっしょで楽しかった」
優しく優しく頭を撫でられて、
泣ける筈も無いのに、わっと泣き出したくなる。
「泣かないで」
病弱だったあの子は、最期までボクを大事にしてくれた。
最期に、ぎゅっと強く抱きしめられながら、
あの子の体が段々冷たくなって行くのを感じていた事を思い出して、
怖くなってあの子にしがみ付いていると、
あの子の体が段々薄くなって行っているのに気が付いた。
きらきらと星を撒き散らせながらあの子が消えて行く。
もっともっと話したいのに。もっともっと遊びたいのに。
せめて夢の中だけでも、ずっと一緒にいたいのに。
ボクを一人にしないで。
しがみ付いて嫌々と首を振るボクに、
あの子は困った様に微笑みながら言った。
キミがボクを覚えてくれている限り、
此処で何度でも会えるんだよ。
だから泣かないで、ボクの親友。
キミは一人じゃないんだよ――

冷たい感覚に目を覚ますと、
見慣れた顔がボクの事を覗き込んでいた。
「やット起きマシたカ……!」
テルテがまた雨を降らせてしまったのか、
天井の隙間からしとしとと雫が零れる。
雫を避けようと起き上がり、
何がやっとなのか不思議に思っていると、
テクニカが嬉しそうにぴょんぴょん跳ね回りながら言った。
「グルム・オキタ! テクニカ・モ・カーボ・モ・ウレシイ」
その後ろには、心配そうに、
ちかちかと頭を点滅させるカーボもいる。
「モう何日も眠ッたまマデ、皆、心配してタンですヨ!?」
テルテに抱きしめられながら、あの子の言葉を思い出す。
そう、ボクは一人じゃない。
ボクの一番大事な夢の中のあの子に、
胸を張って紹介したくなるような、大事な大事な友達がいる。
それを聞いたら、あの子だって笑ってくれるに違いない。
そう思ったら、笑える筈も無いのに、
あの子達みたいに笑いたくなった。

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