並行世界

出会い、そして決意

私が轟のことを知ったのは、中学校に入学した時だ。
轟はお父さんがNO.2ヒーローのエンデヴァーなこともあって、うちの中学、いや周辺の学校も含めてちょっとした有名人だった。さらに、成績優秀、品行方正、眉目秀麗とくれば、同級生男子の子供っぽさに辟易し始めた女子たちに好意を向けられるのは至極真っ当な話なわけで。
それに、何を隠そう、私もそんな完璧超人のような轟に憧れたうちの1人だった。なんだかんだ、カッコいい奴はモテるよなぁ。そんな程度の好意だったが。

そして、私が轟と知り合いになるのは、中学3年で同じクラスになった時。最終学年にして、やっと、と言うよりは、最後に同じクラスになれてラッキーだなって言うのが率直な感想だった。
でも、初めての授業で、先生の指名で轟が学級委員長をすることが決まり、他の委員決めに移った時、「せっかく同じクラスになれたんだから、仲良くなれたらいいな」と欲が出た。轟が黒板の前で、副委員長をやりたい人はいるか、と聞いた瞬間、私は勢いよく手を挙げた。幸か不幸か、私以外に手を挙げた人がいなかったので、すんなりと決まる。
黒板に書かれた「学級委員長 轟」の隣に、轟が綺麗な字で「副委員長 みょうじ」と書いた。

それを見て、私は立ち上がって黒板の方に行き、

「黒板に書くの私がやるから、轟は仕切って」

と言って轟からチョークを受け取った。轟が、

「わるいな」

と言ってくれたので、

「副委員長だからね」

と返す。

それからは、立候補や話し合い、決まらないのはジャンケンをさせたりして、轟が各委員を決めていく。そして私が黒板に名前を書いていく。初めての学級委員の仕事だった。

その授業の後、日直が消す前に私の字で埋め尽くされた黒板を眺める。書かれた名前は、轟と私だけが轟の文字だ。そんなことに優越感を感じたことで、私は自分の中の轟に対する好意を明確に感じたのだ。轟と仲良くなれたらいいなぁという緩やかな希望は、この時既に、絶対仲良くなるという目標に変わっていた。


そしてそれからの私の行動はわかりやすい。

副委員長の仕事をものすごく頑張った。元々人前に出てまとめたりするようなキャラではなかったので、2年までに同じクラスになったことのある人からは驚愕の目で見られるほどに。

それも、轟と仲良くなりたいという下心一心で。

轟は特段無愛想というわけではないが、自ら積極的に話しかけるようなタイプではなかったので、学級委員の仕事を一緒に出来るというのは、目標達成の上でとても嬉しいステータスになった。

おかげで、学級委員の仕事の合間にお互いの話をする機会するうちに、クラスの女子で一番仲が良いのは自分だと思える程には仲良くなれた。

仲良くなるほど話をするので、更に轟のことを知っていった。
好きな教科や食べ物の話みたいなことから、少し踏み入った、個性のこと、お父さんのこと、お母さんとのこと。そして、ヒーローを目指しているということ。

知れば知るほど、私は轟のことが好きになった。

そして、目標を達成した私は決意する。
高校も轟と同じところに行きたい。もっと仲良くなりたい。
だから、同じ高校に行けることになったら、この気持ちを告白しよう、と。


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