並行世界

高校1年、ある日の帰り道

偶然なんて、無い。あるのはいつも、一つ一つの選択肢を選んでいった先の必然だ。

その選択肢が、消去法でたった一つしか選べなかったとしても、その未来は自分で選んだ並行世界なのだ。



私は、中学3年の冬に放課後の教室で轟に告白予告をした。第一志望校に受かったら伝えたいことがある、と。まぁ告白予告とは轟は気付いてないと思うけど、とにかく、第一志望に轟と同じ雄英高校の普通科を受け、もし受かっていたら告白しようとしていたのだ。
しかし、さすが普通科と言えど超難関の雄英高校。アッサリと落ちてしまった。予告の件は気まずすぎて、轟には何の説明もしていないまま中学卒業し、4月からその近くの私立の普通科に通っている。

…今考えるとある意味良かったのかも。

だって振られてたら同じ高校って地獄じゃん。むしろ振られる未来しか見えなかったのに、良く告白しようとしてたな…!確かにクラスの中では、轟と話す方だったと自負している。でも、学級委員してなかったら、絶対そんなに話すこと無かったよな…。それに雄英だって、こんな不純な動機のやつに入学されても困るだろう。うん、これで正解だったんだよ…。

自分に言い聞かせながら、高校からの帰り道を一人歩く。

新品の制服も、新しい友達も、初めての授業も、嬉しいし、楽しい。きっとこれからの学生生活も絶対楽しい。自信がある。でも、この気持ちを轟と共有出来ていたら、もっと楽しかっただろうな…。もう少し勉強頑張れば良かったな…。

…ネガティヴ思考良くない!よし!気分転換になりそうな面白い本でも探すか。あの漫画とか新刊出てないかなー?

そうして、私は駅前の本屋に寄ることにした。



そう、偶然なんて無い。あるのは選択肢を選んでいった先の必然であって、自分で選んだ並行世界。


「お、みょうじ」
「え?!と、轟?!」

まさかの人物と再会したのも、私の人生において、必然だったのだと、私は思いたい。


- ナノ -