17歳
「失礼なやつだなぁ」

「つーか、個人戦も良いけど、ランク戦復帰しねーの?」

米屋の問いかけに「ねー、私がききたいわ」とこぼす。

「まだ箱守兄は行方不明?」
「行方不明じゃないけど、まだ自称旅の放浪から帰ってくる様子は無い」
「隊長がいないからランク戦参加出来ねぇの?」
「うん。そう」
「早くAに上がってこいよ〜」
「流石に太刀川隊や三輪隊とマトモにやり合える気がしないからまだいいよ」
「今Bのどの辺?」
「中位、って言いたいけど全然ランク戦してないからなぁ」
「中位だったら上位の壁があるじゃん」
「あー、」

影浦隊とか?そう言うと、やたらニヤニヤこっちを見てくる二人に圧倒される。

「え、なに」
「いや〜、なまえにとっての壁は二宮隊と生駒隊だろ」
「昨日見たぞ〜」
「何を」
「また辻ちゃんと隠岐と仲良くしてただろ?」
「…何してたっけ?」
「はー?三人で帰ってたじゃん」

二人に訳がわからんと言う顔をされるが、こっちも訳がわからん。

「別に友達と帰るのなんて普通じゃん?」

すると出水と米屋は顔を見合わせて、まじか、とか言ってる。

「なまえってどっちかと付き合ってるんじゃないの?」
「で、どっちかが横恋慕してんじゃないの?」
「え、待って何それ、その安っぽいドラマみたいな話」
「ボーダーで専らの噂だぞ」
「そんなこと言われても」
「まぁお前にそんな気が無くても周りはそう思ってるってことだろ」

そう言えばさぁ、と米屋が急に声を潜めるので、自然と出水と米屋の方に顔を寄せた。

「前に二宮さんとイコさんの不仲説流れたじゃん?」
「二宮さんと不仲説の流れない人の方が珍しくない?」
「こら!」
「まぁそう言うけど…」
「でも二宮さんとイコさんじゃ性格あんまり合わなそうだよね」
「と思うじゃん?」
「え、なに」
「あー、でも聞いたことあるかも。ランク戦の最中に言い争ってたんでしょ?」
「そうそう。あれってさ、原因なまえらしいよ」
「は?どういうこと?」
「辻ちゃんと隠岐のどっちがなまえと仲良いかで言い争ったのが原因で、不仲説流れたんだってさ」
「いやいや流石にそれはないでしょ」
「まじなんだって」
「ランク戦なんて声こっちに聞こえないじゃん。誰情報だよ」
「犬飼先輩」
「うっわ、一気に信憑性無い」
「失礼な奴だなあ」

あははと笑う聞き覚えのある声に顔を上げると、犬飼先輩が米屋の座るソファーの背もたれに後ろからもたれかかっていた。

「あ、犬飼先輩」
「あれ、ミーティング終わったんですか?」
「うん。だから個人戦でもしようかと思ったらさー、なんか人聞きの悪いこと言ってるからさぁ」
「えー、だって犬飼先輩面白がって変なこと言いそうじゃないですかー」
「じゃあさぁ、辻ちゃんとか隠岐くんに聞いてみれば?ランク戦中だったから二人も聞いてるはずだよ?」

あ、そうしろよとか出水が隣から肘で突いてくる。ふぅ、とため息をついて、犬飼先輩に訊ねる。

「新之助ってどこにいます?」
「辻ちゃんも個人戦するみたいなこと言ってたから直ぐ来るんじゃない?…あ、ほら」

犬飼先輩の言葉に振り返ると、飛んで火に入る夏の虫のごとく、新之助が個人戦ランク戦のブースに現れたのだった。


prev next
- ナノ -