「天使がおった」
ある日の生駒隊隊室で、ランク戦に向けた作戦会議とは名ばかりの雑談がいつものように繰り広げられている。水上が食堂に新メニューが出ていたのを思い出し、食堂によく通っている生駒にもう食べてみたのか訊ねた時だった。生駒の突拍子もない返事もいつものことだが、ちゃんと聞いてあげるのもいつものことだった。
「何ですか？イコさん。天使て」
「食堂に新しくバイトの子入ってん。その子がめっちゃ可愛えねん」
「イコさんはどないな子ぉでも可愛い言いますやんか」
「あんまり信用出来ないですわぁ」
「女の子は基本みんな可愛えもんやん」
「マリオとか？」
「そうそうマリオとか」
「マリオ先輩可愛いっす！」
「やめーや！きしょい言うとんねん！」
「マリオちゃんも可愛えで。せやけどな、ちゃうねん」
「何がちゃうんですか」
「天使やで、あの子は」
めっちゃ美人とかじゃないけど、受け答えとか笑顔とかがイコさんの好みドンピシャで、イコさんがさらに食堂に通うようになって、水上とかに「飯食いに行っとんのか、バイトの子に会いに行っとんのかわからへん」って言われたりする話。
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