少年少女
話が違う!

そしてあっという間に時間は流れ。出水と米屋のサポートの甲斐あって(って言っても、出水が口うるさく勉強しろとか言ってきて、米屋はボーダー楽しいぞ〜とか煽ってくるだけだったが…)私は無事に試験に合格し、晴れてボーダー隊員となった。…のはいいのだが、まだ正式入隊式まで日数があるというのに、何故か出水と米屋に本部に連行されていた。


「仮入隊ってこと?別に手を抜くつもりもないけど、そんなに焦らなくて良くない?」

放課後、学校から本部に向かう道の途中、前を歩く出水に話しかける。

「早いに越したことはないだろ。つーか米屋の所為でマズイことになったから、早急に強くなれ」

重く言葉を吐き出した出水は、私の更に後ろにいる米屋をチラッと見た。それに対して米屋は頭の後ろで腕を組んで「別にマズくはないだろ〜」とか言いながら、のんびり歩いている。

「え、何、どうしたの」

2人の顔を交互に見ると、出水がため息混じりに衝撃的事実をこぼした。

「みょうじが期待の新人ってことになってる」

「え?!なんで?!」

びっくりして米屋の方を見ると「なんかなぁ、」と語り出した。

「オレが試験の合否判断のとき人事の人に、オレたちの友人も試験受けたんすよ〜って雑談のつもりで話したら、誰って話になって、名前教えたら、あのトリオン量多かった子かってなって、」
「え、みょうじトリオン量多いの?」
「つっても平均より多めだっていうくらいらしいけどさ。それで話が盛り上がった末に、オレが『じゃあみょうじはオレと出水の推薦て事にしておいてください』とかふざけて言ったら、お前はオレたちがスカウトして入隊したことになったっつーわけ」

米屋の話を聞いてるうちに本部に着き、手慣れた様子で入り口の脇のパネルに出水がトリガーを押し当てる。開いた扉に、出水に続いて、説明する米屋と共に入った。

「ん?それでなんで強くならないといけないの?」
「おれ達の仕事に、ボーダーに向いてそうな奴をスカウトする、ってのがあるんだよ」
「つまり、お前がショボいと今後のオレらのスカウトの仕事に支障が出るから、お前には頑張って期待に応えてもらう」
「え〜〜!は、話が違う〜!」

本部のロビーは思ったより声が響いて、何人かに振り向かれる。慌てて声を落として、出水と米屋に反論する。

「それなりに頑張ればいいからって言ってたじゃん!」
「それ言ったときと今じゃ状況が違ぇんだからしょうがねーだろ」

そりゃそうかもしれないけどさぁ…。出水の言い分もわかるけど、と、米屋の方を見れば、

「とりあえず師匠探すのが早いかな。どう考えたって天才型じゃねーし」
「悪かったね、センス無さそうで」

仮にも推薦しておいて、この発言である。軽く睨んでみたが、にやにやされただけだった。

「あっ、そうだ。みょうじ適性なんだった?」
「ガンナーだった。アステロイドのアサルトライフルが良いんじゃないかって」
「ガンナーかぁ」
「出水と米屋はなんなの?」
「おれガンナーだけどシューター」
「オレはアタッカー」
「2人とも違うのね…」
「そーなんだよなぁ…」

「基本的なことはオレらでも教えられるけど、やっぱ本職に教えてもらうのが良いよな」とか何とか2人で私をどう強くしようか相談してもらってるところ悪いんだけど、私はまだ重大な約束を果たしてもらっていない。

「ねぇ、てかさ、師匠も良いけどイケメンは?」
「あ〜〜?」
「あ〜?じゃないよ、約束じゃん!」

空気を読まなかったのは悪いけど、さすがにヒドい。

「出水、お前さっき辻にラインしてなかった?」
「あ、返信来てたわ。二宮隊防衛任務あったから本部にいるって」
「しょうがねぇな。じゃあ、とりあえず辻紹介してやるか」

当初の目的がそれだったはずなのに、しょうがないで済まされそうなことに、なんか先行きの不安を感じて仕方ない。とりあえず棒読みでも、「やったー、わーい」と、新しく出会うイケメンにワクワクしてみるのだった。


<< >>
- ナノ -