少年少女
迷子かよ

でも、認めたからといって、辻くんとどうなりたいとかあるわけじゃないので、行動が変わるようなことはない。そりゃあ、女子の仲では仲良い自信はあるけど…。てか師匠も言ってたけど、他の女の子と話してるとこ見た事ないから比較も出来ないんだけどさ。

そんなことをグルグル考えながら、今日も二宮隊の隊室へと向かう。
すると、廊下の向こう側に同じく二宮隊室へ向かうであろう辻くんを見つけた。人垣でよくわからないが、師匠は一緒じゃないっぽい。
好きと自覚してから2人で話すのは少し緊張するが、会えたのは素直に嬉しい。

そう思いながら、人垣をかき分けて辻くんに声をかけようとして、私の自信なんて砂上の楼閣なんだって事を自覚する。

ーー辻くんは、女の子と2人だった。

しかも、辻くんは私より流暢に話せている様子だ。横顔しか見てなかったが、すごく可愛い子だった。
なんだか頭が真っ白になって、私は声をかけようと開いた口を真一文字に結び、Uターンしてその場を駆け足で立ち去った。



特に目的地もなく、…と言うより、まだボーダー本部内に詳しくないので、よくわからない道をウロウロしていた。そろそろ師匠との約束の時間だから、二宮隊の隊室行かないと行けないんだけど、なんか行きづらいし…。
どうしたものかと悩んでいると、見知らぬ廊下の向こうから、見知った顔が現れた。

「あれ?みょうじ?」
「どうしたんだよ、A級の隊室んとこまで来るなんて」
「…出水、米屋。ここ、A級のとこだったんだ」
「迷子かよ」
「まぁ、そんな感じ…」
「つか、みょうじ元気無くね?」
「なんかあったんか?」

私が道に迷ってると知ってゲラゲラ笑いだした2人だが、私の反応が薄いのを見て、心配そうに声をかけてくれた。

「何かっていうか…」

なんと返したらいいかわからずに言葉を濁していると、スマホが震える。師匠からメッセージだ。何で隊室に来ないのかという至極真っ当な質問だ。だけど、それにもうまい答えがわからない。

「あ〜、もう二宮隊隊室行きたくない…」
「おいおい、まじなやつじゃん」
「犬飼先輩のシゴキってそんなキツイんかよ」
「そうじゃない…」
「じゃあ、辻?」
「……」

黙り込んだ私を見て2人は察したらしい。

「よっしゃ、緊急会議でも開くか」
「これから師匠と訓練なんだけど…」
「犬飼先輩には腹痛くなりましたとか適当に言っとけ」

出水と米屋のことだから茶化されるかと思ったら、案外親身になってくれて、私は心底こいつらと友達で良かったと思った。


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