少年少女
勘違いってなんですか
「呼び出したはいいけど、どこで何するとか全然考えて無いや」
「えー、なんなんですか、もー」
「うちの隊室空いてたらそこでいっか。ね、辻ちゃん、隊室に二宮さんいないか見て来てくれない?」
行き当たりばったりな師匠の言葉に、辻くんは早足で二宮隊の隊室に向かった。二宮さんいたらどこにしようかなぁ、なんて言いながら、師匠もゆっくり辻くんの走って行った先に向かおうとするので付いていく。
自販機の前で、どれが良い?なんて自然に奢ってくれる流れになってて、辻くんと違って師匠は女の子慣れしてそうだ。
「てか師匠。それより、勘違いってなんですか」
「そのまんまの意味だけど。えー?なになに?もしかして、みょうじちゃんて辻ちゃんのこと好きなの?」
「は〜?なんでそうなるんですか!違います」
「そう?」
「いくら好みのイケメンだからって、昨日会ったばっかりの人を好きとか無いです」
「えー、つまんない」
「つまんなくないです」
「でも、辻ちゃんみたいなのがタイプなんだ〜」
「えっ、あ、それは、そうですけど…」
師匠の軽口に合わせてたら、つい口が滑って余計なことを言ってしまった。師匠は、へーとかふーんとか言いながらニヤニヤとこっちを見てくる。
「別に俺は応援するけどー」
「だから!違いますって」
「さっきも良い雰囲気だったよ」
「えっ、」
「まぁ辻ちゃんが女の子と話してること自体珍しすぎて、他の子と比較出来ないからよくわかんないけど」
「どっちなんですか…」
あ、結局どれにするー?と師匠が自販機にお金を入れながら再度聞いてきたので、テキトーに選んでスイッチを押す。出てきた飲み物をとってお礼を言うと、ちょうど辻くんが戻ってきた。
「犬飼先輩。今誰もいませんでした」
「じゃ、隊室の訓練室でやろっか。辻ちゃんも好きなの選んでいいよ」
「ありがとうございます」
そうして辻くんが選んだ飲み物が私と同じもので、無意味にドキッとする。
「あ、辻ちゃん選んだやつ、みょうじちゃんと同じだー」
そして別にどうでもいいことなのに、わざわざ口に出す師匠。
それを聞いて振り向いた辻くんが、自分と私の持ってる飲み物を見比べて、
「本当だ、お揃い」
だなんて、少し嬉しそうに言ってくる。
そうだね、と素っ気ない答えになってしまったのは、許して欲しい。だって、それはずるい。
自分用の飲み物とおつりを取った師匠が、私を見てやっぱりニヤニヤしながら、肘で突いてくる。
「ほら、早く修行しましょう!ね!師匠!」
「急にヤル気だね〜」
辻くんに赤くなった顔を見られないよう、私は早足で二宮隊室に向かうのだった。