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▽アンケート7位
特別じゃなくても
「はい、バレンタインおめでとう」
バレンタイン当日、チョコを配ろうと玉狛の基地にお邪魔した。タイミング良く1番のお目当だった烏丸が出てきたので、声をかける。
素っ気なく、興味の無いように、義理だから仕方なく。出来るだけそんな雰囲気が伝わるように私は烏丸にチョコレートの入った紙袋を押し付けた。紙袋は100均で買ったやつだし、中身はよくスーパーとかでも売ってる徳用チョコ。
「ほら、烏丸って弟とかいっぱいいるから、一緒に食べれるようにって思って、多いやつ」
遠慮なく紙袋を覗く烏丸に言い訳のようにそれを選んだ理由を述べる。こんなんでも1ヶ月近く悩んだ。
だって烏丸ってモテるから。どうせ私が烏丸のこと好きだってバレてないなら、徹底的に義理チョコを目指すしかない。いいの。チョコを渡せたって事実だけで満足できるから。確かに可愛いチョコも渡したかったけど。でも、下手なことして、この気持ちがバレて、友達としてすら気まずくなる方が嫌だ。
「ありがとう」
「うん。まあどうせ烏丸のことだからチョコいっぱいもらうだろうから、いらなかったかもしれないけど」
「そんなことない」
「なら良かった」
「これさ、弟にもってことだけど、俺だけで食べて良いか?」
「え、弟くんアレルギーとかあった?」
うわ〜、なんて詰めの甘いことしてしまったんだ…!と心の中で頭を抱えていると、烏丸は「大丈夫だけど、」と続ける。
「…みょうじにもらったチョコは、俺だけで食べたいって思って」
烏丸に真っ直ぐ見られて、そんなことを言われたら勘違いしてしまいそうだ。
「え、それってどういう…」
「いや、そのまま」
「か、烏丸にあげたんだから、烏丸の好きなように食べたら良いよ…」
「わかった」
毎年山のようにチョコをもらってる烏丸が、そんないつでも買えるようなチョコで喜んでくれるなんて、もしかしたら、勘違いなんかじゃないのかもしれない。