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「ねぇねぇ、みょうじちゃん、知ってる?」

ヒソヒソと隣の席の犬飼が話しかけてくる。授業中。

「雷が光ってから鳴るまでの時間で、雷までのだいたいの距離が測れるんだよ」
「へぇ」

敢えて冷たい反応なの、気づいて欲しい。

「ピカピカして、花火大会みたいだね」
「そうだね」

予報が的中して、外は大荒れの天気。
窓の外が光る度に窓際の生徒たちを中心に教室が騒めく。

「ねぇ、犬飼、もしかして雷怖いの?」
「えー、なんで?」
「いつもより話しかけてくるから」
「俺が怖いと思ってるんじゃくて、みょうじちゃんが怖がってるんでしょ?」

さっきまでのニヤニヤを正して真顔で訊いてくる。

「怖がってる反応を楽しんであげるから、安心して怖がってね」

…いや、何にも安心できないんですけど。
満面の笑みでそういう犬飼がなんか少し怖くて、雷の怖さは紛れてしまった。

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