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「さんとか、先輩とか、付けなくていいよ」
1つ歳上のなまえさんが、そう言ったのは、偶然本部からの帰りに2人きりになったときだった。
「え、なんでっすか?」
おれは無意味に先輩を呼び捨てにするような横暴なヤツではない。それに言っとくけど、おれとなまえさんはただの先輩と後輩だ。まだ。そのはずだ。
「出水、いつまでも何も言ってこないから」
なまえさんだって、そのことはよくわかってるとおもうのに、ごく当たり前の事を言うように、告げる。
「こっちから距離を詰めてあげようかと思って」
ニヤリと楽しそうに笑うので、真剣なのかよく分からない。
でも、これだけはわかる。なまえさんは、おれの気持ちなんてとっくに気づいているんだ。
これは、なまえさんからの宣戦布告なんだ。
「出水、待ってるよ」
さて、どうやって、その余裕を崩そうか。