title
ドアを開けた途端、むわりと暑苦しい空気が包む。朝の天気予報では真夏日だと言っていた。ああ、暑い。やっぱりクーラーの効いた部屋で寝ていたい…。そう思ってそのまま引き返したくなるが、今日こそレポートを提出しないとそろそろ単位がやばい。閉めたドアから漏れる冷気を名残惜しく足元に浴びながら、照り返しの強いアスファルトを歩き始めた。

大学に着いて、レポートを提出しないといけない教授の研究室に向かって歩みを進める。汗で張り付いたTシャツを煩わしく思っていると、後ろから声をかけられた。

「みょうじやん、久しぶりやなぁ」
「生駒」

「レポート提出やろ?俺も行くとこや」と、返事もしてないのに、隣を歩く生駒。まぁ良いけどさ。

「なんや、忙しいんか?」
「うん、世界救ったり、野菜育てたりしないといけないからね」
「ゲームん中の話やろ?」
「バレた?」
「ほんまゲーム好きやなぁ」
「まぁね」

大学内で良く話す方な生駒には、部屋から滅多に出ない理由もバレている。柿崎くんとかにもバレてるけど、彼は小声を言うからなぁ。その点、生駒は特に怒らないので一緒にいて気が楽だ。

「生駒は?どうなの?」

話の流れで私はボーダー忙しいのか聞いたつもりだったのに。

「俺?俺はゲームよりみょうじと話したりする方が好きやな」

そう。なんて、素っ気ない返事で返すが内心、心臓が痛くなる。生駒はいつも真顔でこんなことサラッと言っちゃうから怖い。一緒にいて気が楽だなんて言ったの誰だ。

「せやから、ちゃんと学校来てくれへん?」
「ん、考えとく」

ああ、本当に今日は熱い。

titletop
- ナノ -