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「うわっ」
防衛任務が終わったばっかりだったから、ちょっとだけ気が抜けていたのは事実。
だからなのか、歩き慣れてるはずの本部の階段を下っていて、踊り場から次の階段は差し掛かったとき、足をもつらせてしまった。
落下する瞬間「やばい」と思ったが、生身の私はそこで上手く落下を回避出来るほど、運動神経は良くない。
来たる衝撃に備え、ギュッと目を瞑ったときだった。
「おい、」
ガシッと腕を掴まれて、踊り場に引き戻される。その勢いのまま尻餅をついたのでお尻が痛い。でも、あのまま階段を落下してた痛みに比べたら雲泥の差だろう。
「あっぶねーな」
ドキドキうるさい心臓を鎮めながら、その声を見上げると。
「なんだ。出水か」
「なんだ、じゃねーし」
立ち上がり、「ありがとう」と言うと、「何こんなところで踊ってんだよ」とか言われる。踊ってないわ。
「あれ、」
「なんだよ」
「トリオン体じゃない」
いとも簡単に私を引っ張ったから、トリオン体かと思ったのに、目の前の出水は例のよくわからんセンスのTシャツ姿だ。
「どういうこと?」
「出水、生身はもっと非力キャラだと思ってた…」
「ばーか」
もう一度私の腕を掴んで、立ち上がらせてくれた出水は拗ねたように言う。
「おれだって、女子支えるくらいの筋肉あるし…」
「うわ〜…」
「なんだよ」
「べっつに〜」
別に何も無い。
ただ、出水も男の子なんだって意識しちゃっただけで。
少しだけ、ドキドキしちゃっただけで。
何も無い。
「二の腕とかわざと?」
「はあ?」
「ほら、おっぱいと同じ柔らかさとか言うじゃん」
「おっ前なぁー。助けなきゃ良かった…」
「うそ、嘘。ごめん。ありがとう」
多分出水は「お詫びにジュースおごれよ」とか言い出すんだろうなぁ。
「じゃあ、ジュースおごって」
「あはは。やだー」