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きっかけは確か、ボーダーに入隊して、初めて話した正隊員の人が諏訪さんで。面倒見が良い諏訪さんは何度も気に掛けて私に話しかけてくれたので、私が諏訪さんに懐くのに時間はいらなかった。
面倒見が良い先輩はいつの間にか憧れの先輩になって。その気持ちが恋だと知る頃には、諏訪さんには5年間付き合っている彼女がいる事も知っていた。中学、高校と一緒の彼女とは中1のときに好きになり、大恋愛の末、高1でやっと付き合うことになったのだそうだ。大学は彼女が県外に行ってしまったので遠距離になったけど、それなりに楽しくやっているらしい。楽しそうに彼女とのことを語ってくれる諏訪さんのことが大好きだった。
そんな諏訪さんが彼女と別れたと聞いた。
理由は彼女の心変わり。
遠距離であるということは、思っていた以上に心も離れてしまっていたそうだ。
何度も謝る彼女を、許す事も、慰める事も出来なかったくせに、嫌いにもなれずに、何も言えずに、終わってしまった。そう言いながら諏訪さんはずっと下を向いていた。
きっと、本当ならこれはチャンスなのだろう。
彼女と別れたと言う諏訪さんを慰めて、私の方を向いてって言えばいいんだろう。
でも、私は、大好きな諏訪さんが、大好きな彼女と別れたことが、本当に本当に悲しくて辛くて。
「なんでお前が泣くんだよ」
「わ、わかんないです」
「お前、俺の彼女の話、好きだったもんな」
お前くらいだよ、あんなに笑顔で俺の惚気だの何だの聞くやつ。そう言って諏訪さんは私の頭を優しく撫でる。
「ごめんな。もう話を聞かせてやれなくて」
泣きたいのは私じゃなくて諏訪さんの方なのに。謝って欲しくなんてないのに。
涙が止まらなくて、上手く言葉に出来ない。
鈍った頭で巡る思考は、諏訪さんじゃなくて、諏訪さんの恋に恋をしていただけ、という結論に辿り着き、私は。