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もうすぐ夏休みだと浮き足立つ7月のある日の昼休み。あたしは何時ものように食堂できつねうどんを頼んだ。あったかいやつ。この時期にあったかいの頼むなんて「頭がおかしいとしか思えないのだよ」そうそう、おかしいよね…って、


「緑間?」
「なんだ」
「なんだはこっちのセリフ。なんで食堂いるの?」
「俺が食堂にいてはいけない理由でもあるのか」
「いや、そうじゃなくて、いつも弁当じゃん」
「今日のラッキーアイテムがうどんだったので、食堂でうどんを食べることにしたのだよ」
「ラッキーアイテムがうどんなのは、朝からうどんの乾麺握りしめてたから知ってたけど、さらに食べるの?」
「尽くせる人事を尽くすまでだ」


ドヤ顔で言われても、片手に乾麺、片手に食券じゃしまらないよ…。しかも、食券を見れば、


「冷やしうどんじゃん!」
「この時期に熱い麺なんて食べてられるか」
「わかってないなー、緑間」


少し上からものを言えば、緑間は不機嫌そうに何がだとか言う。


「うどんはあったかい方が美味しいんだよ」
「時期によるだろう」
「食堂マスターのなまえちゃんからしたら、夏に冷たいうどん食べるなんて緑間もまだまだだね」
「そんなもの知らん」
「優しいなまえちゃんが、食堂初心者の緑間くんに、あったかいのを譲ってやろう」


そう言って緑間と食券を交換しようとしたが、緑間が手を挙げてあたしじゃ届かない位置に食券を掲げ阻止された。

そして、頭上から溜め息。


「な、なんだよー」
「大方、食券を買う時に押し間違えたのだろう」


ギクッ


「そ、そんなことななな…」
「わかりやすい奴だな」
「うるさい」
「…貸せ」
「何を?」
「お前の食券を寄こせと言ったのだよ」
「え?はい」


食券を緑間に渡すと、代わりに緑間の食券を渡された。


「え?いいの?」
「俺はうどんを食べることが人事を尽くすことであって、温度なんか関係ないのだよ」


…うわー、もー、緑間の優しさってわかりづれー!くそー、なんかしてやられた。緑間にドキドキするとか末期だわ、あたし。


「緑間!ありがとう!」
「…ふん」
「大好き!」
「…は?」


少し赤くなって、やっぱり返せとか言いながらあたしを睨む緑間がすごく、すごく可愛く見えた。眼科行かなきゃかな。



それが恋よ

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