バッドラ
昼休みは45分


昼休み、友達と机を並べてお弁当を食べていると、そのうちの一人が、同じクラスのもう一人の幼馴染…宮 治の方を一瞥してから「ほんまなまえって羨ましいなぁ」と言った。

「あの宮兄弟の幼馴染なんてさ」

周りの子達も、うんうんとうなづいて賛同する。

「でも良いことだけじゃないよ」
「やっぱ過激派のファンとか怖い?」
「今はそんなじゃないけど、最初は怖かった」
「なんで今はそんなじゃあらへんの?」
「前より学校では話さないようにしてるのと、あと、呼び出してくれる人たちには説明してる」
「え、やっぱ呼び出しとかあるん?」
「うん。まぁ常套句だけど『あんたと宮君たちは釣り合ってない』『付き纏うのやめてくれる?』とか」
「うわ〜〜、そんなんドラマだけや思ってたわ」
「だから『釣り合ってないから、2人の眼中に私は入って無いと思います』って言ってる」
「何その自虐」
「実際そうだし」
「そんなことあらへんよ!まぁ確かに?パッと見で可愛い!ってなるタイプやないけども!」
「一緒にいると可愛いって分かるんやけどね〜」
「性格美人?」
「いいよ、微妙なフォローは」

慣れてるし、と笑うと「ほんま可愛えよ、なまえは」と言ってくれる。うん。分かってくれてる人がいるだけで充分。

「で、ぶっちゃけなまえって宮兄弟と何かあったことあるん?」
「何かって何」
「付き合うとか」
「無い無い!」

ずいっと顔を近づけてきた友達に、ふと昨日のことを思い出すが、あれはただ侑が私をからかってるだけだし。そう思って全力で否定するが、友達も食い下がる。

「ファンにチクらへんから!」
「いや、本当そういうのないんだって」
「仲ええやん!」
「仲は良いと思うけど、兄弟的なやつだよ」
「仲ええのは認めるんかい」
「…大きな声じゃ言えないけど、仲は良いと思うし、あいつらと仲良く見えるのに悪い気はしない」

そう冗談めかしてニヤリと見渡すと、皆もニヤリと笑ってくれた。隣の子は「なんや、惚気かよ〜」と笑いながら肘で突いてくる。

「まぁただの同級生やのうて、結構な有名人やもんねー」
「うん。自慢の幼馴染。…でも、それだけだよ」

「なんや〜」「つまらんなぁ」と言う友人たちには悪いけど、本当に何も無いのだ。

昼休みが残り少ないことに気付き、友達たちの侑派か治派かの論争に耳を傾けながら、お弁当の続きをかき込んだ。


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