不器用
大体の期待は外れ

ちょっとしたスレ違いやカン違いで、その後の人生が大きく変わることがある。

そして、そのちょっとした間違いについて、後からあの時ああしていれば、だなんて思ったって無駄なのだ。

だって、もう人生は、その時選んだ道で進んでいるのだし、別の道を選んだからって自分の思うような人生になるとは限らないし。

しかし、わかっていても、後悔することはある。



「鋼さん…この方は…」
「荒船哲次。みょうじ、孤月の師匠欲しいって言ってただろ」


はい。言いました。そして、鋼さんが友達にちょうど良いやつがいるから紹介してやる、ってのも言われてました。

せめて、名前くらい確認すれば良かった。

そうすれば、孤月の師匠にちょうど良い鋼さんの友達が、ある事をきっかけに仲の良かった小学生以来、口も聞きたくないくらい苦手な人だってわかったのに。

でも、紹介されてしまった今、それは何とも今更な話で。

「よろしくな」

何も知らない鋼さんを恨む訳にもいかず、私は目の前の人物が差し出した右手をとるしか無かったのだった。

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