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出水から「やっぱ今日行けねーわ」ってLINEが来た時点で、あ、こいつらなんかあったなってのは、すぐにわかった。もし、予定思い出したりして来れなくなってもみょうじに伝言頼むはずだし。つーことは、みょうじには伝言頼めない状態なわけで。

「出水が来れない代わりに三輪誘ったけど、誰が行くかって言われた」
「そりゃそーだろ、よく誘えたな…」

みょうじの変なテンションから、多分、出水が遂に告ったんだろうなってのは予想がつく。なんだかんだ、出水はわかりやすい。俺とみょうじが二人で話してたりすると、ちょっと嫌な顔するし。本人は隠してるつもりなんだろうけど。

それにしても、みょうじのこの反応はちょっと予想外だった。出水と二人で話してる時とか満更でも無さそうだったのに。


「なぁみょうじ」
「な、何?」
「秀次もいいけど、出水は?」
「う…」


オレの至極真っ当な質問にみょうじは一時停止する。視線を右往左往させた後、絞り出すように呟いた答えは、また予想外で。


「米屋…、私、出水に裏切られた…」
「…はあ?」


そのまま俯いてしまうみょうじに、その答えの真意を問う。


「いやまじでどういうこと?」
「なんか…、出水って私のこと…、その…す、好きなんだって!」
「お前出水のこと嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ。好きだよ」
「じゃあいいじゃん」
「良くないよ。好きだからずっと一緒にいたかったのに。友達なら喧嘩しても仲直りすれはいいじゃん。でも彼氏とか彼女とか別れちゃったらお終いじゃん。だから、私は友達のまま、ずっと一緒にいたかったのに…!出水のバカが裏切った…」


あー…なるほどね…。

みょうじ、つまりにお前は本当にバカなんだな。…まぁバカなのは知ってたけど、これほどまでとはなぁー。


「出水がそんな風に見てたなんてこれっぽっちも思わなかったよ…」
「えー、あいつわかりやすかったけどな」
「嘘、」
「…と、思うじゃん?」
「え?そんなに?」
「うん。めっちゃわかりやすい」
「例えば…?」
「例えばー、あいつは友達と思ってるだけの奴と、わざわざ遠回りしたりしない」
「あ、遠回りしてたの気付いてた?」
「気付くだろ、明らかにお前ら来るの遅ぇもん」
「それは申し訳ない」
「いや、それは別に良いけどさぁ。本題はそっちじゃなくて。お互いに好きならそれで良いじゃん。別れたくなった時は好きじゃないんだから、そのまま別れたらいいし」
「…私だけが好きで、出水が好きじゃなくなったら?」
「それは無い気がするけど…。とにかく、この話はオレとしたってしょーがねーよ」
「え、じゃあ誰に話せばいいの」


本当に、本当にバカだな、みょうじ。


「出水に決まってんだろ」


え〜…とか渋るみょうじをオレの家から連れ出して、死ぬほど落ち込んでるだろう出水を探して、話はそれからだ。


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