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※死ネタ注意
Don't you ever no more cry.
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CYPRESS GIRL FRIEND
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自分や家族に被害の無かった犬飼にとって、彼女の死が一番身近な損失だった。
犬飼はボーダーに入る前に、ある場所を目指したことがあった。
これだけの被害の中で、担任の語る話が嘘だとは思わなかったけれど、どうしても彼女が死んだことが信じることが出来なくて、彼女がその短い生涯を終えたという場所に行ってみたかった。
阻んだのは、警戒区域につき立ち入り禁止という看板と有刺鉄線だった。
犬飼がボーダーに入隊した理由もそれだ。
彼女の仇をとりたいだとか、彼女のような被害者を出したくない、なんて大層な理由ではなく、ただ、その場所を見たかったのだ。
ボーダーに入隊すれば、警戒区域にも簡単に入れると思った犬飼の予想は当たり、任務でも無く警戒区域をうろつくのは、小言を言われることがあれど、禁止はされていない。
彼女の家があったその場所に行って、どんなに待ってもその家が瓦礫の山から復活することは無かった。生を感じさせない灰色な世界だ。現実を見れば泣けるのかなぁと思っていたが、ある意味で現実を感じないその風景では涙は出なかった。
その日から何度かこの場所を訪れては、犬飼は彼女に様々なことを話した。楽しかったこと、落ち込んだこと、面白かったこと、悔しかったこと。
返事を待ったことなどない。
何故なら彼女はもういないと分かりきっているから。
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彼女、とは言っているが、その女の子と犬飼ただのクラスメイトだった。強いて言う関係と言えば、教室で隣の席だったことくらい。ただそれだけの関係で、事務的に必要があれば会話をすることもあったが、日常的に雑談を話す事すらなかった。
だから、犬飼は自分が何故彼女に固執しているのか、全く分からなかった。あえて言うのもなんだが、犬飼は頭が悪い訳ではない。むしろ良い方だ。要領も良い。こんな事で悩むほど、自分の事をわからないわけでは無いはずだった。好意を寄せていたのだろうか。そんなはずは無い。
…いや、本当は、そう思いたいだけだった。
それがはっきりとわかってしまうほど、犬飼は賢いのだ。
ただ、取り戻せない時間の為に、自分の感情を肯定出来るほど、素直ではない。
だから、犬飼は悩み続けた。
俺は何故彼女の面影を追うのだろうか、と。
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「犬飼先輩、警戒区域に何しに行ってるんですか?」
同じ隊の後輩に訊かれたこともある。犬飼は「何となく、だよ」と笑って誤魔化した。その後輩は、誤魔化されたことがわからなかったわけではないが、誤魔化されたことを咎めてしつこく質問を重ねるほど、空気が読めない奴ではないので「そうですか」とだけ答えて、別の話題に移った。
でも、犬飼はそろそろ辞めどきかなと思った。
見えない答えを探す為に、会えない彼女に会いに行くのは辞めようと、そう、思った。
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「今日で最後にするね」
その独り言は、廃虚に吸い込まれるように溶けた。答えは無い。当たり前だ。こんなくだらない独り言を言うのも、最後。
そう思った時、犬飼は、初めて何故か涙が出た。
どうして気付かなかったんだろう。泣いてしまえば良かったんだ。彼女の死を、一度受け止めてしまえば良かったんだ。
それすら出来ないほど、彼女がいなくなったことが、犬飼にとって大きなことだったのだと、初めて気付いた。
そして、初めて認めた。
「やっぱり、君のこと好きだったのかもしれない」
認めたくせに、誰もいないのに、素直には言えない。そんな言葉に、返ってこないはずの笑い声が聴こえた気がした。
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