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「太刀川…どうだった?」
「全滅…お前は?」
「こっちも…」


顔を見合わせた太刀川とみょうじは状況を報告し、互いの結果に悲痛な顔をした。…決して戦場で味方がやられたとか、そんな大層なものではない。
まず、ここは戦場ではなく、ボーダーのラウンジだ。


「だー!まじか!」
「今年もふたりぼっちのクリスマス餅パーティーかぁ…」


そう、クリスマスイブに太刀川とみょうじ主催で開催される、毎年恒例の餅パーティーに参加する人がいない、ただそれだけの話だ。
でも2人が悲痛な顔をするのは、それが今年も
だからだった。


「なんかみんなリア充すぎない?そんなにイブだからって予定入れる?」
「だよな?もっと参加する奴らいても良いと思うんだけどなぁ」
「防衛任務入れてる人たちは狙い目かと思ったら、その後予定あるとかでみーんな断られて」
「どんだけだよ」
「ね、まじリア充末長く爆発しろ…あ、唯我は?出水とか柚宇ちゃんはわかるけど、あいつリア充じゃないでしょ?」
「おいおい…唯我が聞いたら泣くぞ」
「それはうざい」
「…唯我はクリスマスは毎年家族でハワイだと。ハ・ワ・イ」
「まじ?うらやましすぎ!」
「ある意味リア充だよな」
「はぁー…。それにしても、また2人ってのがね」
「ははは、俺たちで付き合うか」
「あはは」



「変な冗談やめてよー」と言おうとして、みょうじはふと気付く。
あれ?太刀川と付き合うのって意外と有りなんじゃないか?と。
よく見たら割とカッコいい気がするし。今までの彼氏みたいに、防衛任務で忙しいときに浮気を疑われるとかそういう面倒もない。それに、素の自分のままでこんなに気が合うのも太刀川くらいなもんだ。
今までがずっと仲良い友達だったから気恥ずかしいけど、それを除けば全然有り…ていうか、もしかして、むしろ好きかもしれない…!


「まぁ冗談だけどなー」と言おうとして、太刀川もふと気付く。
あれ?みょうじと付き合うのって意外と有りなんじゃないか?と。
見方によっては可愛い気もする。個人戦やったり、こうやって餅パーティーだー!とか一緒にいて楽しいし。
友達だと思ってたから考えたことも無かったけど、みょうじならキスもその先も全然出来る。むしろしたいかもしれない。それって、好きってことなんじゃ…?



「…なぁ」
「…うん」
「まじで付き合う…?」
「うん、いいよ…」


改めて口に出すと照れ臭いが、なんだかんだ、幸せになれそうな気がする。別にクリスマスが人肌恋しいから、とかじゃなくて。2人はそう思った。


かくして、クリスマスを前に1組のカップルが誕生し、今年から毎年恒例ふたりぼっちの♂めふたりっきりの<Nリスマス餅パーティーとなった。




「よ!弾バカ」
「ん?あ、槍バカか」
「太刀川さんとみょうじさん、付き合い始めたんだってな」
「それな!めっちゃ驚いたよな!」
「だよな!」

「「まだ付き合ってなかったのか、って」」



…クリスマス餅パーティーに誰も参加しなかったのは、太刀川たちに遠慮していたからだったというのを2人が知るのは、また先の話。


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