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馬 鹿 は 寝 て も 治 ら な い



とりあえず私も防衛任務があるし、いつまでも太刀川隊室にいるのもおかしいので、部屋の外に出ると、そこには諏訪と太刀川がいて聞き耳を立てていた。

「ちょ、何してんの」
「なんだ、出てくるの早いな」
「えろい展開になると思ったのに」
「ならないから!バカ!」

下世話にケタケタ笑う2人を睨んでると、2人はターゲットを二宮に移したようで。

「二宮もやっとお持ち帰り成功して良かったな!」
「…みょうじ、話したのか」
「いやみょうじに聞かなくても何となくわかるって」
「あんなに堂々と連れて帰ったくせに。二宮、変なとこ天然だな」

諏訪と太刀川は、これでしばらく酒が美味いとか言いながら肩を組んでいる。どうせ私たちのことを酒の肴にするつもりなんだろう。

「あ〜、もううるさいなぁ!私、防衛任務あるから!じゃあね!」
「おう!お二人さんお幸せに〜」

何なんだあの2人。酔ってんのか?ってくらいテンションの高い2人の視線を背中にチクチク感じながら、二宮とその場を離れた。

「お前、もう酒を飲むな」
「えー、ってまぁ理由は何となくわかるけど…。てかさ、逆になんで二宮飲まないの?本当は弱い?」

思わずニヤニヤと二宮を見れば、怪訝そうな顔をされる。

「やけに嬉しそうだな」
「いやぁ、二宮くんも弱点があるなんて、人間だったんだなぁって」
「俺は別に酒に弱くない」
「えー、またまた〜」
「残念だが。こうなることを狙ってたから飲まなかったに決まってるだろ」
「はい?」
「お前が酔って一人で帰れなるのはいつものことだ。送ってやる名目で2人になれば、今回みたいになるだろうとは予想してた」
「え、じゃあいつも飲まなかったのは、いつも狙ってたってこと?今回たまたまじゃなくて?」
「今回は邪魔な加古がいなかったからな」

望が言ってたのって、こういうこと?

「なんなの」
「俺だって、人間、だからな」

さっきのお返しなのか私の言葉を引用してくるあたり。二宮って頭良いのに。そんなこと狙って飲まないでいるとかさ…馬鹿だね。私がそう思ったことを言うと。

「馬鹿なみょうじに言われたくない」
「なっ、」
「まぁそれがお前の良いところ、か…」
「…なにそれ…」

そう言って二宮は珍しく楽しそうに笑った。

私の馬鹿は寝たくらいじゃ治らない馬鹿だ。
でも、二宮がそれが良いって言ってくれるなら、馬鹿でも良いかなーなんて。二宮にそんなこと言ったら、絶対また馬鹿にされるだろうな…。だから絶対言わないけど。


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