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運 命 は 突 然 嘲 笑 う も の



「ん…、朝か…」

目を閉じていても、カーテンの隙間から朝の柔らかい光が射し込んでいるのがわかる。体温で程よく暖まった布団の中で微睡むこの時間が、私は大好きだ。今日は防衛任務があるけど、まだ時間があるし、二度寝も良いな。そう思いながら寝返りを打とうとして、ふと気付く。なんでそっちから光が射してるんだ。え、ってことは、つまり、

ここ、私の部屋じゃない。

状況を確かめようと、ゆっくり目を開けて、更に衝撃的な事実に気付いた。

私の部屋じゃないどころか、隣に誰か寝てる…!

「に、二宮…」

隣にいたのはかわいくない後輩で…。え?待って?これどういうこと?
ほとんど無理やり覚醒させた頭を回転させて、昨日の記憶を手繰り寄せる。昨日はみんなで飲んでて、それで…。

…あ〜〜、これはやばい。全く覚えていない。

起き上がって自分を見る。…服着てない。周りを見渡すと、生活感を感じないシンプルなワンルーム。多分二宮の部屋だ。

…うん、絶対やばい。

身体に残る跡やら、違和感やらで何があったのかはわかった。でも、どうしてこうなったのか、全く覚えていない。

これは完全にやらかしたやつだ。

私が頭を抱えると、その動きに反応してか、二宮が身動いだ。起こしたかと思って心臓が飛び跳ねたが、起きてはいないようだ。

私は二宮を起こさないようにゆっくり、でも大急ぎでベッドを抜け出して、自分のものらしき衣服をかき集め、とりあえず身に纏う。そして、そのまま猛ダッシュで、二宮の部屋を後にしたのだった。




一旦家に帰った後、防衛任務の為に本部に来た。絶対二宮には会いたくなかったから本部になんて来たくなかったけど、こんなときに限ってばっちり防衛任務が入っている。こそこそと人目を避けるようにB級隊室の並ぶフロアを歩く。忍び足なのはもちろん、息も押し殺し、カメレオンでも使いたい気分だ。今、一番近付きたくない場所だが、自分の控え室もこのフロアあるから寄らない訳にもいかない。

「よ!」
「ひゃあ!」

突然背後から声をかけられて、心臓が飛び出るかと思った。恐る恐る振り返ると、私が会いたくない人とは違う人で。

「た、太刀川か…」
「どんだけビビってんだよ」
「いや、ほら、」

そんな私の反応を見て、太刀川は流石に察したようだ。

「なまえさん、昨日、あの後二宮となんかあっただろ」
「…ニヤニヤこっちを見ないで」
「ゆっくり語ってもらうとするか」

とりあえず、B級フロアは色々と危険なので、太刀川隊室に行くことになった。太刀川隊は割と何も無いときは隊室に集まってる子が多いのだが、今日は出水も国近ちゃんも唯我もいない。太刀川隊の子たちの代わりに、諏訪がいたが。

「げー!なんで諏訪もいるの?」
「絶対面白い話きけると思って」
「面白くないから…」

ニヤニヤするこいつらに話さない、という選択肢はどうやら無いらしい。

「てかさ、なんで私が本部にいるってわかったの?」
「今日、防衛任務だろ?」
「わざわざ私のシフトまで調べて来たの?」
「昨日、自分で言ってたんじゃねーか」
「そうだっけ?」
「お前、ベロンベロンに酔ってたもんな」
「昨日、何があったの…?」
「やっぱり覚えてねーんだな」
「覚えてたら今困ってないんだけど」
「てかさ、なまえさん、二宮んち行ったんだろ?」
「なんで知ってるの?!」
「いや、昨日あの場にいたやつらはみんな知ってるから」
「えっ、まじか…」
「その反応ってことはさ、やっぱり色々あったんだ?」
「…え〜…お、お察しください…」
「あ〜、最後までヤっちゃった感じ?」
「…う、…うん」

それはマジで面白いとか言いながら爆笑する諏訪と太刀川。

「いや本当笑い事じゃないんだって…!」
「え、後悔してんの?」
「後悔ってか…反省してんの!」
「嫌じゃなかったんだろ?」
「そりゃあ、まぁ…。でもさぁ、お互い酔った勢いでって…!私、何にも覚えてないし…!」

「だとよ。良かったな」
「…は?」

諏訪が太刀川隊作戦室の奥に向かって突然話しかける。
すると、奥から溜め息を吐きながら出て来たのは、私が今、最も顔を合わせるのが気まずい人物だった。


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