今日こそ、今日こそ私は“あれ”を言うのだ。そう決意して、口を開く。
「いいか櫻野君、私には友達がいない」 「……は?」 「私は思い至った」 入学から早いもので10年以上、しかし私には友人と呼べる人物が一人も居なかった。理由について多く語る事は控えようと思うが、とにかく、そういうことなのだ。
「自分が変人だと言う自覚は無いのだけれど、私は変人なのかもしれない」 「それは物凄く今更だね」 「ずっとそう思ってたの!?」
わりとね。そう笑う彼、櫻野秀一に軽い殺意を自覚したのはきっと、間違いでは無いだろう。 「あなたも同類でしょう、あなたも!」 「僕は別に」 「嘘を仰い。知ってるわよ」
櫻野の事を友達だとは認識していないが、同類だとは認識していた。彼もまた、友人の居ない人間の一人である。私はそう信じて、止まない。
「そうだな、じゃぁ今井は」 「……友達だと思ってるの?」 「どうだろう」 「じゃあ、却下ね。腐れ縁よ、腐れ縁」
いけない、少し取り乱してしまった。大きく深呼吸して、落ち着きを取り戻す。
「そこでね、私は君に提案があるのよ」
えらく長い前置きになった気もするが、本来の私の目的である言葉を、告げよう。正直気恥ずかしくてたまらないものの、気を強く持とう。
「何かな」 「えっと、つまりね」 「うん?」 「その、えっと、わたしと」 似合わず、頬が熱くなるのを感じる。しかし言うしかない、そうだ言うしかない!
「友達に、なって下さい!」 「……は?」
豆鉄砲を食らったような、そんな表情で私を見つめ返す櫻野に、穴があったら入りたいとはこのような気分かと考える。
「はは、その、友達が居ない者同士仲良くしましょ……」 「僕はずっと昔からそのつもりだったけどね」
あのね櫻野君、気持ちは言わないと伝わらないのよ。
正直ネタ 思ってたものが二日連続で書き上がらなかったので急遽 *13.12.12
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