* 09 *


※胸糞悪い話と言うか人間が怖い話に仕上がったかもしれないのでご注意ください。
 フィクションであると言うことを念頭に置いてお読みください。






「うんうん、いい具合に仕上がったね!あとは何より実践、実践ってところだ。
 無理だと思ったら当然素直に言ってくれればいいけど、ちょっと訓練がてら、感覚忘れないうちにハードめのスケジュールこなしてみよっか!」


 そう、朗らかに言って人の肩をぽんぽん叩いたあの先生の腹立たしさと言ったら。
 っつか前もその言葉聞いた気がするぞ???

 ……げふんげふん。
 失礼、素直に愚痴が出てしまったな。

 まぁとにかく、我が恩師のそんな教育方針のお陰で、でびゅうせんの翌々日。
 本日3件目の任務地に到着でございます。

「お、おい大丈夫か」
「大丈夫です………」
「つな……?」

 真希さんと狗巻さんに連れられています。今日一日、朝イチからずっと一緒。
 パンダさんと伏黒くんは今日は別行動みたいです。

 っつか先輩らすげえな。当然のようにこなしてるもんな。いっつもこんなんなんかこの人らは。

「一昨日始めて任務出た奴には過酷すぎるかもな」
「シンプルに体力っていうか気力?が追い付きません……」

 しかも、任務も急にハードになってるからね。
 こないだ三級一匹だけだったじゃん!なんで次急に準ニがうじゃうじゃいるとこにぶちこむかな!!!!!
 そら!!!!先輩が!!!!二人もおるとしてもよ!!!!自衛で精いっぱいじゃい!!!!

「たらこ?」
「いや、次まだあと一件残ってるからな。休憩の時間はとれねえ。今回だけ車で待機ってんなら別だけどな」
「いや………っいやそれはちょっとなあ…!行きます、足手纏いになったら非常に申し訳ないんですが、行くのはいきます」
「お、意外と根性あるな」

 じゃあ走れよ。
 そういって、真希さんは軽やかに駆け出した。
 僕はもう流石に地の体力枯渇仕掛けなので、全然余裕で呪力補正掛けます。無理です。

 とはいえ社畜。体力尽きてからこそが本領。ゾンビになっても働き続けるのが社畜ってもんだろ。
 我ながら悲しいこと言いながら内心で己を鼓舞して、気合を入れて臨みます。

 意地ってわけじゃないけど、最早義務感だけで動いているところはあります。
 でもこういう無茶、のラインを超えた頃からが一番のトレーニングにもなるやろうしな…。これでちょっとは体力ふえたらええねんけど。

 一件目は、東京近郊のあるいわくつきの歩道橋。二件目は、横浜のいわくつきアパート。
 そして、三件目。
 山形県近くの、ある町のはずれにある、”ある施設”。

 所謂、「特養」という奴だろう。特別介護老人保健施設?あまりそのあたりの区分には詳しくないが、おそらく結構重めの介護が必要な方たちの居る介護施設の様である。

 当然、施設故、敷地内まで車で乗り付けてもよかったのだが、如何せん、今回のこの施設は不審なところが多いようで。あえてアポも取らず、高専という事も明かさずできるだけ隠密に調査をしよう、という事になっているのである。

 そんなわけで今私たちは三人そろって就活生かな???って勢いの真っ黒のスーツに身を包んでいるわけだ。

 そして、施設に到着する。従業員や業者が使う側の駐車場の入口から、三人でてくてくと施設内に侵入が成功した。

 その施設は豊かな自然の中にある、と言えば聞こえのいい、山のほど近い街のはずれにある、白っぽい建物だった。
 古びた昔風の病院、と言うとイメージしやすいかもしれない。
 飾り気はなく、質素な白いコンクリートの壁。入口には銀色で同じく飾り気なく、施設の名前が書かれた看板が立っている。
 国が運営しているものとかだとこういうもんなんだろうな。
 とは言えピンクとか、柔らかい色味を主としている施設も少なくないイメージだから、やっぱりここはそれなりに飾り気というものに縁遠いのだろう。

「…あ、タイミング、いいみたいですね」

 ふと、”それ”を見つけて、私は思わずにっこりとした。
 見るからに葬儀屋らしい名前のロゴが入った、少し大きな車。
 それに、人でも入れそうなくらいの縦長の段ボールの箱。何かしらの抜け殻。

 一目でわかる。
 どう見たって、見間違いようもなく、棺の入っていた段ボールだ。

「あ?」
「他所の業者、出入りしているみたいです」

 そういって、うろつくおじさんたちに視線をやる。成程、例にもれず、黒い制服。

「そうみたいだな。でも、だからなんだ?」
「ああいう時って、大体、面倒だから裏口の鍵はあけっぱなんですよ」

 そういって、おじさんたちが入っていったドアに向かう。
 思った通り、オートロックの扉が閉じないように、出入りが自由なように、ドアストッパーがかまされている。

「行きましょうか」
「珍しく強気だな」
「おかか」

 とはいえ、そんなことでひるむ先輩たちでもなくて。
 おじさんたちがすぐそばにいないことを確認して、私はその扉から当然のような顔をして施設の中に入り込んだ。

 思っている通りだった。
 裏側のこの辺りには誰もいない。
 基本的には葬儀業者に構っている暇なんて、施設の人達にはそれほどないのだ。

 当然のような顔をして、そのまま中を進む。
 誰かに会ってもあの葬儀業者の名前を出せば問題ないだろう。

 適当に見て回って、それらしいところを見つける。受付、というかフロントと言うか。
 そこでにこやかに挨拶をして、葬儀業者の名前を出した。

「あぁ、そうでしたか。随分若いので面会の方かなと思いましたよ」

 受付の職員さんはそういって朗らかに笑っている。人当たりのいいひとだなあ。

「あぁ。よく言われるんですよねえ。化粧っけがない所為なんですかねえ」

 などと言って笑って流しながら、やすやすと入館証をゲット。名前書いてくださいねーとかも特になかった。白々しく、駐車許可書ももらっておいた。
 この辺りの警戒心の緩さは確実に地域によるだろうなというところ。後は施設にもよる。
 あのドアストッパーが許されてるあたり、あと葬儀屋のおっちゃんたち入館証置きっぱなしで首からかけてなくても許されてたあたりだいぶんゆるいんだってことは分かってたからな。

 自然に会話を切り上げて、私たちはフロントを後にする。
 見えなくなった所で、駐車許可書を折りたたんでポケットに突っ込む。

 幸い、呪霊の気配は、いかにも人の居なさそうな離れ?のような小さな建物から放たれていた。

「親族に施設入居者でもいんのか」

 まっすぐその気配に向かいながら言った。

「まぁ、そんなところです」
「にしてもがばがばだな。良いのかこんなんで」
「皆さん、多忙ですから。特に、この業界は」
「それはそうだとしてもよ」

 そんなもんか、と特に気にする様子もなく、私たちはイージーモードで歩いていく。
 一旦建物を出る。
 その離れのような建物は、セレモニーホールの様だった。

「なるほどなあ」

 言いたいことは分かった。
 そういって、真希さんはその看板をまじまじと見る。

 ”故 寺鷹瀬道葦 葬儀式々場”


 見た感じ、そのホールはホールだけの作りで、一階建てのようだった。
 こっそりと中を伺う。
 まだ、電気もついていないあたり、誰もいないような雰囲気だ。
 そっと、真希さんが扉に手を伸ばす。鍵は開いているようだった。

 静かに、こっそりと、私たちはホールにお邪魔する。
 通夜が今日であることは看板から伺い知れた。が、まだ何の準備も初めていないようで、その収容人数はそこまで多くなさそうなホールの中はがらんとしていた。

「ここ…じゃねえな」

 真希さんが周囲を伺う。
 何一つ、呪いのようなものは見えない。

「こんぶ」

 狗巻さんが、下を指さして、言った。
 そうだ。気配は、確かに、この下から放たれている。

「下?どこかに降りる階段があるのか」
「ってことですかねえ」

 がさがさと探索が始まった。
 とは言え大して広くもなく、そして椅子くらいしか置いていないホールだ。
 それを見つけるのに、大して時間はかからなかった。

「あった」

 真希さんが言う。
 床下収納のような、床の扉。

 特に鍵も何もなく、その扉は簡単に開いた。
 階段が下に伸びている。
 クトゥルフかホラゲだったら、ラスボス戦への道、というところだろうか。
 それでも躊躇なく、先輩たちはそれを降りていく。

 真っ暗な中。
 先頭を行く、真希さんがスマホであたりを照らした。

 結構長く降りて、ようやく、扉のようなものに行き当たる。
 同じように鍵も何もないそれは、簡単に開いて、その先の空間へと私たちを招きいれる。

 だだっ広い空間だった。
 長く降りただけあって、天井はそれなりに高く、地上にあったホールの倍近くの広さの空間が、そこにはあった。

 ふと、電気のスイッチのようなものを見つけて、狗巻さんがそれを押した。
 部屋の中に、蛍光灯の光が降り注ぐ。
 
 とはいえ、この広い空間には見合っていない数だった。
 周りが見えるようになったとはいえ、十分な光量とはとても言えない。
 薄暗いなか、目を凝らす。

 不意に、何か。耳が、微かな音を拾う。

 何かの、声のような。
 音のありかを探すように見回せば、一枚、扉を見つけた。

 静かに、歩み寄る。

「ここだな」

 目の前まできて、真希さんが言った。
 そして、躊躇うことなく、その扉をあけ放つ。

「!」

 扉の先は、小さな部屋。
 そして、酷く歪な、そしてしわくちゃにしたような、崩れたヒトガタのような呪霊が、その部屋の中で、うずくまるようにして、ぶつぶつと何かを吐いていた。

 ば、と、それはこちらを見上げる。

『それも、捨てるの』

 存外、綺麗な声をしたそれは、普通の女性のような声でそういった。
 昏く、陰鬱な響きであることは間違いなかったが、それでも、想像していたよりずっと、人間、のような声で。

 だからこそ、わだかまった、”ヒト”の悪意のようなものが鮮烈に感じられて、とても、生々しい。

 すがるように、或いは、絶望するように、そのしわくちゃは、こちらに手を伸ばし、歪な動きで、駆け寄ってくる。

 真希さんが跳ねのく。
 奥の部屋は狭そうだ、と私と狗巻さんも広い空間の中ほどまで後退した。

 それは、構わず追ってくる。


 ふと、視界に、狭い部屋の奥が移る。

「……!!」


 呪霊は唸る。
 広い部屋の真ん中で、戦闘が開始した。

「あ〜〜〜」
「んだよ」
「しゃけ?」
「いや、今はいいです」

 思わずうなってしまったが、私は、気を取り直して、腰からりんほんをもぐ。
 今朝一発目、宣言してからにしろっつったろ、と真希さんにブチギレられたので、いきます!!!と元気に宣言をしてから、りんほんを顕現した。
 今回も、大きくても大丈夫そうだな。

 ぞわ、と、体は否応なしに反応するが、なんだかメンタル的には本日三回目ということもあって慣れてきた。
 特に動揺することも少なくなってきていたので、なんてこともないまま、私はいつも通り、斧を手にする。
 先輩たちも流石に慣れてきたらしい。
 眉をひそめてはいるが、そこまでのダメージはないようだ。

 目の前の呪霊はというと、驚いたように跳ねのく。
 あ、まてよ?もしかして、いつもいつもみんな呪霊は一旦距離とるなと思ってたけど、りんほんの不気味さ、呪霊にも効いているのか???

 とは言えその戦闘開始の騒々しさにつられてきたのか、染み出すように、広い空間の壁や天井、地面から様々な形をした呪霊が次々と湧き出してきた。

 ううん、皆さま中々重めの業を背負っていますね。
 人生何事もそううまくはいかない。やっぱり今日の通例通り、三級より強めの呪霊がわんさかカーニバルのようです。そろそろ、体重たくなってきてるんだけどな!

「行菱死ぬなよ!」
「ウィッス!死んだら言います!」
「言ったからには守れよ」
「こんぶ」

 広いっていいな。
 地下であることは少しだけ恐ろしいが、それでも、広い分気にすることは少ないわけである。
 真希さんものびのびと薙刀を振り回している。

 私も私でそれなりには乱闘を。
 よそ向いてる奴を精力的にしばきに行くほどの元気はないので、あくまで迎撃主体、という事で。

 とはいえまとまってきてくれると、斧の一振りでまとめてふっとんでくれるので楽ではある。そして爽快感もある。

 これが沸きつぶしってやつか、などと思いながらもおおざっぱに呪霊を祓っていく。
 定期的に心配そうに狗巻さんがこちらをみてくれていた。優しい。大丈夫です、何とかまだ動けます。

 もうね、湧く呪霊がゾンビなのか私がゾンビなのか分からんけど、テイスト的には完全にゾンビゲーと化してるよね。ひたすら無心で処理していくしかないからね。




「お前でしまいだ」

 そう、格好よく真希さんが宣言をして、戦闘は終了した
 気配的にも、全て処理できたことだろう。

 ぱん、と狗巻さんが膝をはらっていた。

「お、終わった〜!」

 私は思わずその場にしゃがみこむ。
 めちゃくちゃしんどい!!!!めっちゃしんどい!!!!

「おら、休むのは車に戻ってからな」
「この辺の見分とかいいんですか」
「狗巻が済ましてる」
「すじこ」
「いつ!?仕事早!!!!」

 ちゃっかりぴーーすを向ける狗巻さんに瞠目しながら、さっさとこの場を後にしようとする真希さんにおいていかれないよう、私も慌てて立ち上がった。

 入ってきた扉から、長い階段をのぞむ。

 ……これ、今から上るんか。しんどすぎん?

「おら行くぞ」
「あっ、はい……」

 やっぱりひるんだ私を察知したのか真希さんは先を行ってハッパをかけ、狗巻さんは後ろから心配そうに見ている。
 ひえとかひょえとか言いながらも、仕方なく私も重い足を上げて、階段を上り始めた。

 少し後に、狗巻さんがとびらを閉める音がした。
 私は、それまで、一度も振り返ることはしなかった。


◆◇◆◇◆



「あっ…やばい……これはやばい…ねる……」

 走行する車の、心地よい揺れ。
 良いシートなんだろう、長時間の車移動でも全く腰にダメージの来ないその座席は、疲れ切った体を睡眠に落とすにはあまりにも丁度良くて。

 次の現場までは20分もかからない、と聞いているにも関わらず、私は抗えず睡魔に負けそうになっていた。

「寝てもいいけどさ。」

 隣で、真希さんが言った。

「さっき、お前、何見たんだよ」
「え?」

 思ったよりも真面目な声音に、私は閉じかけていた目を無理に開いて、彼女を見る。

「地下でだよ」
「あ〜。」

 そういえば、そうだった。うっかり口に出て、悟られてしまっていたんだったか。

「いやあ、あの、人間の闇の深さと言いますか」
「具体的に、簡潔に」
「ウィッス。あの、あれっす。」

 思い出すだけで、少しだけ、背筋が寒くなる。
 異様な光景。あまりにも、異質な。



「―――――夥しい数の、骨壺、でした。」



「は?」
「骨壺。お遺骨箱。」
「なんでんなもんがあんなところに」
「ね。分からんっすけど。尋常じゃない数、ありましたよ。部屋が狭かった、というよりは、それを安置するために棚がありすぎて、空間が狭くなっていた感じ、というか」
「…マジもん?」
「おそらく」

 見慣れたものだから、おそらく、見間違っていることはない。
 地域によってデザインもサイズも違いはあるだろうけれど、あれは確かに、そうだった。

 それっきり、真希さんは口をつぐんでしまった。
 全く、意図の読めない不気味さに、だろうか。
 それとも、私が感じたような、うすら寒い、人間の、闇を、想像してしまったからだろうか。


 結局、見分したとは言え、私たちが知りえる情報なんて些末なものだ。
 今回は少なくとも、施設側の悪事を突き止めることではなく、そこに発生している呪霊を祓う事だけが目的だったこともあり、特に追及はしなかった。
 結局、入館証もそのホールの棚に置き去りにして、職員の誰にも何もいう事なく、私たちは施設を出てきたくらいだ。

 だから、あくまで、これは、私の想像でしかない。
 多分、あんなのは、めったにない、どころか、本来施設としてはやってはいけないことなのではないだろうか。


 ――――それでも、あの光景は、確かに、事実だった。



 手前のあの、異様なまでに広い空間。

 もしかしたら、あそこにも、これから棚をたくさん詰め込んで、奥の部屋と同じような空間にするためのものなのかもしれない。
 そう考えると、とてもとても、寂しい話では、ある。

 私は、多分、先輩たちよりも、少しだけ、”その現場”に似た状況を知っている。

 だからこそ、あの瞬間、聞こえた気がした。
 幸い、私が今までお会いしたお客様の中で、そんなことを言う方はいなかったけれど、それでも、少しだけ、そんな雰囲気をにじませる方、っていうのがいたのも、紛れもない、事実、だから、こそ。





 ――――――”そんなもの”、もらっても処理できない。そっちで、引き取ってくださいよ。







 その、最上級の呪詛は、カサカサになるまで強い強い炎で焼かれた遺骨に、確かにしみこんで、そして、あのくらいくらい地下の部屋で、その悲しみとともに、深い深い、呪いに、なってしまった。




 ”それも、捨てるの”




 あの言葉は、誰の言葉だったんだろう。
 そんなものいらない、なんて悲しい言葉を投げつけられた、職員さんの悲しみの念だったのだろうか。
 それとも、同じ、見放された悲しみを孕む”仲間”への同情の念か。




 ……いや、やめよう。
 あくまで想像でしかないことに、私まで、深い念を抱いてはいけない。

 ただ、ただ、施設の中に遺骨を共同埋葬するような場所があるのかもしれない。今後面倒をみれないご家族向けに、施設側がご供養しますっていうような、そういう。
 そしてお遺骨の本体だけを埋葬して、残った壺と箱を、あそこに一時的に保管しているだけとか。
 或いは、ご遺族様がご遺骨をペンダントやキーホルダーにおさめて、ずっと手元に置くために粉末にして、全てご遺骨の粉末はお家の人に渡して、壺や箱だけ不要だからと引き取ったのかもしれない。

 可能性なんていくらでもある。
 くらいことばかり考えるのはやめよう。
 いくらあそこに呪いが発生していた、とは言っても、そりゃ、入れ物だけだったとしても一時はご遺骨を納めた壺だ。本体はどこか別の場所にあっても、少しばかりの念が残ることなんて、あり得る話だ。
 それも、あの数だし。


 私は、そこまで考えて、小さく、首を振った。
 そして、逃げるように、外の景色に、目を向ける。



 流石に、そんなことは、あり得ない。


 そう思うために、私は、見なかったことにするしかなかった。




 ――――――まるであの、供養でもするように、部屋の一角に設けられた、つつましくいけられた小さな花々と、何本も何本も立てられた跡のある、線香立てを。


























―――――――――――――

※以下あとがき




 一応弁明しとくと、完全にフィクションですからね。
 こんなことあったら色んな意味で怖いなって思っただけのフィクションですよ。

 あと言っておくと、多分ご遺骨を今後お世話できないってなったら大抵のひとは永代供養に預けるとか、そもそも元からご遺骨を拾わないで行政にすべてお任せするとか、そういう方法がありますから、わざわざ拾ったうえで、しかもお世話になってたからって言って介護施設に押し付けるなんてことは多分あり得ません。大丈夫です。
 火葬場によっては、本編にも出てきてた共同埋葬する区画があったりして、ご遺骨をお家にもって帰られない方はそのまま火葬場にお任せするっていうところもあります。

 それでも介護施設に、ってなったら多分、おばあちゃんはこの施設が大好きだったから、とか相当ポジティブな理由になると思うんで大丈夫です。うん、大丈夫。

 (自分で書いたくせに人間の闇深すぎて怖くなった挙句自分で自分に言い聞かせるの図)
 (っていうか多分法律的にもアウトなんやないかな。有耶無耶グレーでしれっと押し付けるのは可能だろうけど)




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