ギルガメッシュと名乗ったその男に正直好感はまったくといっても過言でないほどいだけない。偽名を、しかも古代の王の名前をよくも平然となのれるものだ。
くわえて本人だのなんだのいっていたが耳をかたむける必要は無い。お世話になる身なんだから少しくらい付き合ってやるべきであったか。
ただでさえ狭い傘に押し入るようにはいってきたギルガメッシュの図々しさといったら一級品だ。
「それにしてもなんだこの粗末な差し物は」
「仕方ないじゃん、折りたたみ傘だし」
「庶民どころの話ではないな」
「うっさい」
雨のお陰でせっかく巻いた髪はびしょびしょだし崩れるし、頬はあかいし。
「本当に、我にそんな口を利くのは遥希と綺礼くらいのものよ」
「誰、キレイって」
「来ればわかる。なかなかに興の惹かれる男だ」
あ、そう。と口から出た言葉は案外にも素っ気のないものだった。
かなり失礼な態度を取っているにも関わらず、ギルガメッシュはケラケラと愉しそうに笑ってる。…なに、変なの。
「あんたも相当変わってるよ、こんな得体の知れない女拾ってさ」
お互いに変わり者なのだ。