聞いて欲しい、第二の人生を語られたところで分かるはずもないんですよ。
もっと女らしくしろだの品をつけろだの言われたってさ、いきなり出来るわけねーっつの。
気が付いたら上手く丸め込まれていたあたしの現在位置は客用ベッド。言峰が見るからに体に悪そうな麻婆豆腐を出したので今日の夕飯は抜きである。
「おなかすいた…」
胃がなにか食べるものを求めている。ってかいっそ窓から抜け出してしまおうか、コンビニでパン買いたい。
そうだなにも律儀にここに居る必要なんてどこにもない。
大窓の鍵を外して開けると気持ちのいい風が吹き込んでくる。今日は憎らしいくらいキレイな星空ですね。
「どこに逃げる気だ」
「またあんたかよ!なんでこんなタイミングいいのさ!」
「我に不可能はないからな。折角我が手ずから夜食を持ってきたと言うのに、肝心な貴様は脱走の試みとはな」
「脱走っていうか脱獄な気分ですがね」
窓にかけた足に力を入れて窓に立つ。後は飛び降りて一目散に逃げれば助かるでしょうね。
…でも、背後からありえないくらいいい匂いがして進まない。
「どうした?行けば良いだろう」
「…っ分かってる!」
――ぐきゅるるる、
「…………」
「…。ふはははっ、食い意地の張った女よ」
「うっさいわさっさとそれ下さい!!」