「まあ緊張するな。座りたまえ」
うわ、このお兄さん超ブアイソ。
黒髪に濁った目のその男は紛れもなく、言峰綺礼である。正に言峰。
やばい超近づきたくないんだけどなにこれ拒否反応ってやつですかこれ。
「そう身構える必要は無い」
「は、はあ…」
「ギルガメッシュ。今度は何を拾ってきた」
「その辺に放っておくには中々に勿体無いやつだったのでな」
「ただの小娘にしか見えんが」
「そうですただの小娘なんであたし帰ります、御迷惑おかけしましたさようなら」
よく噛まないでこんな長文を喋れたものだ。こんな場所にいては命がいくつあってもたりない(こう精神的にさ)しその上この底なし沼のようなくらい瞳があたしはどうも好きになれそうにない。失礼だけども。
「急がなくとも雨がやんだら去ればいい」
「いえ、傘があるんで」
「そのガラクタか?」
「ガラクタって……うああぁあぁあぁぁああ!?」
――ウソでしょそんななんでちょっとえ!?
入り口であたしの帰りを待ってたはずのそれは見るにも無残な姿になっていた。くつくつと笑い声がよこから聞こえてきてその犯人はすぐにわかった。ってかあたしと言峰が話してたんだからもうこいつしかいないじゃん。
マジで最悪だ。
「いやあ悪いな、あまりにも柔らかい棒であったわ」
「鉄が柔らかいわけねーじゃんバカ!」
「王に向かって無礼な口をきくものだな」
「王王ってあんた頭湧いてんでしょ!そんな大昔の人がここに居たら妖怪じゃん」
「…言うに事欠いて妖怪だと?面白い、我が自ら貴様の身体能力を測ってやろう」
円状の波紋が点々と現れて、そこから金色の剣やら槍やらが出てくる。目が点になった。
「王の財宝――受けてみよ!」
「ぎやあああ!!やめてってギブギブ!!」
あたしの横ぎりぎりに突き刺さった剣に腰を抜かしそうになって顔面蒼白で謝罪を繰り返す。今までの人生で一番情けないぜあたし。