摘み取る未来


 


抵抗ある、とは言ったものの正直流れで言ってしまっただけではるなは取り分け人を殺める行為に抵抗なんていうものは殆ど無かった。
これは元々彼女の性格にあるんだろう。純粋なようで、彼女の見ている世界は狭い。人の死は彼女の興味の範囲外にある、手に掛ける恐怖もかけられる恐れさえも彼女は人並みの想像を得てしていない。

怯える子供の手を拘束しながらはるなは上機嫌で次々と幼子を殺める龍之介を見やった。


「ねえ龍之介」

「んー?何どうしたの?」

「ぎゃあああっ」

「もうこれで七人目だけどあと何人持ち帰るの?」

「取り敢えずは三人くらい?旦那が首を長くして待ってるだろうし、俺らだけ楽しむのも悪いじゃん!」


殺人鬼とは思えないほどに無邪気な笑顔で子供の喉にナイフを突き立てる龍之介。
赤々と透明な血が口と喉から泉のように流れる様を、龍之介はうっとりと眺めている。ピクピクと痙攣する少女の爪先は既に遊ばれたのか指がいくつか欠けていた。


「楽しそうだね」

「もう最高!まじで旦那が来てから今まで以上に楽しくてさあ!そこにはるなまで来るんだから俺超COOLな人生送ってない?」

「龍之介が最高と思える人生なら、いいね」

「だろー!!」


四人目の子供を殺めると、返り血に塗れた頬をおもむろに拭った龍之介。
こちらに歩み寄ってくる龍之介に尋ねると今日はもう帰るんだとか。

充分満喫したらしい。


「この子達はどうするの?」

「俺が四人持つから、はるなは三人ね。十人は欲しかったけど…殺しちゃったし、いっか」

「うん」


ごろごろと転がる体の一部分、だったもの。
鮮血がほとばしる壁は綺麗な赤で一つの芸術品のようにも思える。
実際、雨龍龍之介は自称アーティストだ。

人の体、臓器で何かを作る事が好きらしい。


「マジさはるなって普通の女と違うよな」

「え?」

「怖くないの、うーん。それとか」


それ、と指される場所には生首が白目をむき出しにして転がっている。
確かに不快感はそれとなく感じる。どうしてこんな顔で死なせてしまったのかという、龍之介に向けられた想い。
どうせなら綺麗な顔のまま殺めた方が芸術らしいのではないか。
そういった浅木に、龍之介は眉を下げて答えた。



「分かってねーなあ」

「なにを」

「ピカソとかってさ、最初は理解して貰えなかったんだぜ。あの奇特な絵!」

「うん」

「俺も同じ。綺麗なばっかじゃ見飽きるだろ?そんなの絵画の世界で充分なんだって。
やっぱリアルは他の奴には現せないモノを作らないと素材にも申し訳ないし?」



やはり紛い物なりにも芸術家らしい魂を持ち合わせているらしい。
浅木は適当に返事をして必死に抵抗する子供に目をやった。

「この子、将来きっと美人になるね」

「ん?うわホントだ!んじゃこの子はそうだなー…よし!この子の腸を使って悲鳴で鳴くオルガンにする!」

「…へー」


そんなキラキラした目で見られたって、どう返せば良いかなんて分かりっこない。
取り敢えず一際怯えるその子の手を取り出きるだけ優しく笑いかける。引きつった表情が少しだけ緩和して、変わりに助けを請う眼差しを浴びせられた。



「ごめんね、お姉ちゃん貴女を救うことは出来ないんだ」


再び愛らしい少女の顔が歪んだ。


 


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