かみさま、きいて | ナノ

「春の夜は寒いから、」

 




「…で、」

「何でしょう?」

「なにが何でしょうだ馬鹿!オマエおばあさんの部屋で寝るだろ!?おい!」

「やぶからぼーにぃー」

「ふざけんなよ!早く出てけボクはもう寝るんだぞ!」

「今日おばあさんとおじいさんが早く寝ちゃって怖くて…。ほら私怖がりだから」

「知るか!」


ウェイバーが就寝しようと部屋に入ったとき、何の不自然もなく備え付けの布団に入っていた咲は笑顔で『おかえりなさい』なんて言ったものだからウェイバーは発狂しそうな勢いで問い詰める。しかもさり気無く布団はくっつけられてるし、おまけに自分の枕まで持ってきて準備万端の様子だ。…なに考えてんだよこいつ。



「いやあね、ウェイバーが一人で寝るのも悲しいと思ってさ」

「全然寂しくない」

「またまたぁー!それに布団だって使われたいよね?ウン、ボクヲツカッテ!!」

「何くだらない芝居してんだよ!」



さっさと出てけと言わんばかりに布団を引っ剥がそうとするウェイバーに対抗して、意地でも動くまいと抵抗する咲。そんな攻防が数分続き、根を上げたのはやはりというかウェイバーだった。



「…………もうすこし布団離せよ」

「え!いいの!?やったー!」

「離せって!」


ぐいぐいと押してくるので仕方なく4センチだけ距離を開けた咲。ウェイバーが布団に入ったのを確認して、光の速さで布団をくっつけた。ちょ、なにすんだよ!!


「おいくっつけるなって言っただろ!」

「だってこんなチャンスもう無いかもしれないもん」

「可愛こぶるな馬鹿!」

「っへへへ、暖かいでやんすねぇ」

「ひっ…足入れるな!」



さり気無くウェイバーの布団に入り込み、冷たい足をくっつけた咲。冷たいなんてもんじゃない。これは凍りだ、一気に布団が北極になった。


「ウェイバー寒いー」

「知るかボクだって寒いわ!」

「よしじゃあ暖めてあげよう」


ぎゅう、とくっついてきた咲に慌てて引き剥がそうと身を捻るウェイバー。なんといってもあれから変わらず免疫0の童貞というレッテルは剥がれないままなのだ。いまにも涙を流しそうなウェイバーにまったくお構い無しにくっついたまま笑顔で


「おやすみなさい」


と完全に眠る体制に入った(しかも凄い力で引っ付いている)ので、ウェイバーは頭を沸騰させながらなるべく意識をどこかにやって眠ろうと目を閉じた。