かみさま、きいて | ナノ

温度

 



「咲ちゃん、ちょっとお買い物行って来てもらっていいかしら?」

「はい勿論です!あ、でもこの辺詳しくないから迷うかも…」

「ふふ。大丈夫よ、ウェイバーちゃんと行って来て」


そう聞くやいなや飛び出すようにウェイバーの部屋へ向かった咲におやおや、なんて暢気にマーサが笑う。階段を駆け上がる音がやけに響いている。


「ウェイバー!買い物!一緒に!」

「うわあああ何なんだよいきなりドア開けるな馬鹿!!」

「買い物行こう!買い物だよ買い物!」

「一回で分かるわ馬鹿!」


頭をぼかりと殴られて涙目になる咲をお構い無しに買い物メモをとりあげるウェイバー。しかし一方は触られたぜきゃっほーいなハイテンションで部屋を物色しはじめている。


「ウェイバーって破廉恥な本持ってないよね?」

「は?な、なななに言ってんだよ馬鹿!」

「持ってたら燃やします」

「誰が買うか!」

「あ、これあれだ!アドミラブル大戦略IV!やりたいウェイバー!」

「知るか!」

「おーねーがーいぃぃー!」

「買い物行くんじゃないのかよ」


あ、そうだったと忘れかけていた用件を思い出してウェイバーの隣に並ぶ。今日の夕飯はカレーっぽいね、と幸せそうに語る咲にそうだな。と一言。やっぱりどう考えてもボクが好きだという神経は理解できない。



「オマエ、ボクのどこがいいんだよ」

「全部!っていったらありがちだよね、うーん…」


どう口説いたらいいのか、なんて冗談にも聴こえるような呟きに(ていうか絶対冗談だろ)ウェイバーは溜息をつく。会ってもない人間にどうして惚れられるんだよ、と聞いたら"会えないんだからしょうがない"と返された。むちゃくちゃだけど正論だ。



「最初は性格、次に顔ですね」

「性格?」

「だって一生懸命だし優しいし、ツンデレだし。カッコいいし」

「ツンデレってなんだよボクがいつデレた」

「さあ行こう!混む前にーっ」



左腕に抱きついてぐいぐいと進む咲。これ以上話を聞きだすのはどうやら無理らしい。行ってきまーす!と元気のいい挨拶の後に、二人はマッケンジー家をあとにした。