かみさま、きいて | ナノ

これは一つの奇跡

 



「…ふーん。じゃあオマエは此処じゃない日本から来たのかよ」

「……うん」

「話を聞く分には信じられないけど、まあ実際ボクの事を知ってたからあながち嘘ではないだろうな」

「それで、ウェイバー…さん?」

「今更さん付けとか要らない」

「じゃあウェイバー、私帰る場所がないからここに置いてください」



ていうかウェイバーから離れない。死んでも傍に居てやる。と呪いの言葉を付け足したから恐ろしい。なんでボクなんだよ、それもあんな卑屈でヘタレだった頃のボクに。自分で言うのもあれだけど好きになってもらえるような魅力なんて欠片もないし、ましてや女に免疫もないからこういったことは心底苦手だ。



「会いたくて仕方なかったけど、ほら二次元の壁というか…」

「まあ普通はな」

「だからこれも夢かもしれないし積極的にならないと勿体無いって思って」

「ああもう一々泣くなよ馬鹿!」


べしっとハンカチを投げつけられて固まる咲。しかしその意図を察すると更に涙を浮かべてそれでごしごしと目をこする。赤くなるぞ、とのウェイバーの忠告も聞き入れる余裕なんてなく懸命に涙を拭おうと手を動かした。



「抱きついてもいい?」

「ブッ」

「帰ったらもう触れないもん」


だから今のうちに!と返事を待たずに抱きつかれて、当然胸元に感じる女特有の柔らかな感触に、意識をどこか遠くにやろうと取りあえずなんと説明すれば良いかを考え始めた。