かみさま、きいて | ナノ

傍に居たい、と泣くのです

 

 
「オマエ、いい加減離れろよ!」

「嫌だ!死んでも離れない」

「それじゃあオレは向こうだから。じゃあなウェイバー」

「あ、おい!」



まさかの放置を喰らったウェイバーは、隣でへばりつく彼女に目を向けた。黒髪に肩辺りまでのセミロング。顔はどう見ても日本人(というか日本語を話してた)。5年もこの日本に根を下ろしているわけだから、理解力があり努力家なウェイバーはほんの2年程度で日本語を大方マスターしていたわけで、彼女との意思疎通が出来たというカラクリだ。


「…なあ」

「何?」

「オマエさ、初対面だよな」

「うん」

「なんでボクのこと知ってるんだよ」

「あ、うんそうだよね。突然言われても困るよね」


ごめんあんまりにも嬉しくてはしゃぎすぎた、と彼女は少し照れたように笑った。少しウェイバーから離れると、花が咲いたように笑い改めて自己紹介。


「改めて初めまして!ウェイバーさんが大好きな咲です」

ウェイバーさんのことは漫画で知りました、となんとも奇天烈な事を言うものだからさすがのウェイバーも間の抜けた声を出す。今こいつ、なんていった?



「ずっと、ずっと会いたくて…これ現実ですかね」


ぐず。と鼻をすすりながら涙を浮かべる咲。そりゃこれが現実じゃないなら夢だとでもいうのか。試しに手の甲をつねってみたが、やはり痛い。


「言ってることが意味分からない」

「あの。多分私この世界の人じゃない」


多分でいうか、絶対に。そう付け足してついに震えながら泣き始めたから周りの目が痛くて一刻も早く此処を離れたい。チッ、と罰が悪そうに舌打ちをして泣きじゃくる咲の手を引いて足早に帰路を歩いた。