かみさま、きいて | ナノ
かみさま、きいて
これ以上は高望みだ。そう自分に言い聞かせても残念ながら涙は止まらない。 見慣れた部屋。変わらない場所がそこにはあって、ついに帰ってきてしまったんだと目頭がまた熱くなる。
「…あれ、」
携帯の時間はなんと驚くことに一週間の時が過ぎた事を伝えていて、録音メッセージやメールの件数が過去最高記録を超していた。 たしかに私は向こうの世界で時間を過ごしていたのかと思うとこそばゆいような、でも切ないような気持ちが満ちてその場に膝を付いて泣き崩れる。
たった三日、体感時間はそれだけ。
だけど私の人生の一生のような永遠のような宝物みたいな時間。 匂いも、体温も、声も、顔も、全部覚えている。誰よりも愛しいその人を余すことなく覚えている。
幸せの余韻は今も確かにこの胸に刻まれていて腕の温かさも確かに記憶に刻まれていて。ウェイバー・ベルベットという存在から与えられたものは本当に大きい。 確かに今ウェイバーとの間に大きな壁が現れたはずなのに、何故かこれでお別れとは思えなかった。
そうだ、さよならを告げていないんだ。 だからまた必ず会えるはず。
「大好きだよ、ウェイバー」
いつもは虚しく消えていたこの言葉も、なんだか向こうの彼に伝わっている気がした。 少し照れたように小声で返事をする姿も浮かぶ。
まだ思いは伝えきっていない。だから絶対に会える。
それは途方も無い先かも知れないし、もしかしたら今すぐにかも知れない。 だから私はいつウェイバーに会ってもいいようにずっと笑顔でいるようにしよう。
大好きな彼の隣をもう一度歩くために。
かみさま、きいて
「孤独だ、と口にした瞬間に」 「確かに私は孤独になりました」
「幸せだ、と思った瞬間」
「私は世界一の幸せ者になりました」
|
|