かみさま、きいて | ナノ

Long time ago...

 


あの人が居なくなってから、ボクは孤独をたびたび感じた。ボク一人では少しひろく感じる小部屋とか、いつだか買ってきたゲーム機とか。マッケンジー家の食卓に欠けた賑やかさだとか。シングルベッドは二年前に壊れてしまって、今は日本特有の布団。誰が眠るわけでもないのに、マーサさんがいつあの人が帰ってきてもいいようにと空の布団が隣にいつも敷いてある。グレンさんに紹介されたバイト先から帰宅したら、夕飯を食べて風呂に入ってなんとなく短い時間を過ごして眠る。――そんな日常はかわりばえもなく過ぎていく。そんな、ある日のことだった。



「うぇ、ウェイバー…?」

「……は?」

「ウェイバーだ!ウェイバーだ!!」


がばっ、と余りにも勢い良く飛びついてくるものだから反応におくれて体制をくずしかける。なんなんだ、と目を見開いて固まっていたら隣のバイト仲間が知り合い?だとか暢気に尋ねてきた。情けないが女の知り合いなんていない。



「だ、誰だよオマエ!」

「会いたかった!」

「だから誰なんだって!」

「咲!私、ウェイバーが好き!」



初対面、突然の告白。あまりに矛盾がめだつその出会い。一目惚れとかそんな次元ではない。だって向こうはボクの名前を知っている。帰るぞ、と助け舟を出してくれたバイト仲間に便乗し鞄を持って去ろうとすると、


「私も一緒に帰る!」



だとか、大声で言われたものだから頭痛がした。





始まりは、そんなふざけた出会い。
prev next /