かみさま、きいて | ナノ

ともだち

 



「ウェイバー!あれやろう!大戦略!」

「はあ!?オマエやり方分からないだろ」

「いいじゃん手とり足取り教えてよ、友達でしょーねぇえー」

「ああもううるさい!」

「電源はこれかな?おっ、点いた点いた」

「ばっ、オマエ勝手にっ」


ゲーム機のそれらしいところを押したら電源が入った。あとは向こうとなんもかわらない、テレビの電源を入れてチャンネルを合わせるだけだ。へへへ、こう見えてもテレビゲームはやってたのよ!あれ情けなくない私。



「でたーー!うおお本物!すごい!」

「データ消すなよ!?絶対消すなよ!?」

「えーと、これか対戦用は」

「…へえ。素人がボクに勝つ気でいるのかよ」

「なにその悪役な台詞は!教えてくれるんじゃないの?あ、書いてあったここに」

「負けたら一日パシリだからな」


ふふん、と得意げに笑って隣に腰掛けたウェイバー。対戦、ライダーとやりたかっただろうなあ。いけねえこんなところでウルッときてどうする!渡されたコントローラーを手にとって画面に向き直る。よーしウェイバーをパシリにするぞ!


「オマエ、負けたら今日ボクの部屋に入るなよ」

「じゃあ私が勝ったらここで寝ます」

「よし乗った」


いい歳した大人がゲームに没頭するとはなんとシュールな。案外操作は簡単だから、第二戦局になるころにはもう大体マスターした。ゲームの才能だけは誇れるんだぜ私!はっはは!その後もウェイバーの国を落とし、軍備を進めていき待ったをかけるウェイバーも無視を決め込んで、



「どうだ素人の力!」

「……嘘だ、そんな、」

「よっしゃこれで今日もあったかい!!」


きゃっほーう!とトタトタ駆け回る私を見てウェイバーが溜息。なにそれすごく失礼。っていうかそんな世界の終わりみたいな顔しないでよ。プレパラート並に繊細な咲のハートは砕けたぞもうっ。うへぇ。


「それにしてもそのシャツ好きだねウェイバー」

「…うるさいなあ、別にボクの勝手だろ」

「ライダーが着たからすこし伸びちゃってだぼだぼじゃん。肉つけな肉、なんなら私の分けてあげるよ」

「分けられるもんじゃないだろ」


皮肉を吐いて腕を組みながらどっかりと座るウェイバー。それもそうだけど細すぎる。とぶすくれるとウェイバーが口角を上げて笑った。


「そういえばさ、ウェイバーってゲーム好きなんだっけ」

「…今はそれだけだけどな。他のにもまあ興味はある」

「へえ!それならあれだよ私めっちゃ面白いゲーム知ってる!」




こっちにはあるか分からないけど!と付け足して、電気屋に行くことにした二人。ウェイバーはこんなことにバイト代を使うのもあーだこーだと渋っていたが、たまにはいいと説得して財布を片手に向かう。やっぱりこっちの世界もセブンとかファミマとかはあるんだなあ、と思うとどうも実感が無い。



「うわ、でっか!」

「この辺では1、2番目に大きいからな」

ほら行くぞ。と前を歩くウェイバーに雛の如く付き従う。エスカレーターで二階に上がり、ゲームコーナーを見ると在った。ドラクエ。


「これだよこれ!ロールプレイングゲームっていうんだけど、」

「ふーん。そんなに面白いのかよ」

「これは向こうにないから分からないけど、このシリーズは絶対面白い!」



あ、でもウェイバーの名前でやらないでね!ってか字数足りないか、と一人完結で笑う咲。?意味が分からない。取りあえずそれを持ってレジで会計したら、なんか良く分からないくじをさせて貰った。…当たりだ。賞こそ下から二番目だったが、渡された
お菓子の詰め合わせに思わずくすりと笑って見せた。




「ほら、やる」

「え?なにこれ」

「当たったんだよ。お菓子の詰め合わせ、だって」

「いいの!?ありがとう!!」


ぱあっと嬉しそうな顔でそれを受け取り――かけて指先がピタリと止まる。


「ねえ、ウェイバー」

「なんだよ」

「私を太らせるつもりじゃあ…」

「要らないならボクが食べるからいい」

「ああウソウソ!!私が食べる!!」



ありがとう!と笑って早速開けてグミを取り出した。りんご味らしい。


「はい。ウェイバーにもあげる」

「ボクは要らな」

「肉つけてよばか!」


半ば必死な姿に苦笑と共にそれを受け取った。甘酸っぱい味が口に広がる。やすっぽいけど優しい味だ。