かみさま、きいて | ナノ

知っているよ、君のこと

  




「…ねえ、ウェイバー」

「何だよ」

「いつもあんな嘘付いて悲しくないの?」



ピタリ。廊下を歩くウェイバーの足が止まった。すると怒っているような、泣き出しそうな、そんな曖昧な表情で振り返って口を開く。


「別に悲しくなんてない」

「だってライダーって五年前に」

「うるさい!知ってるよそんなこと!」


「いつまでもライダーさんを待ち続ける、マーサさん達も可哀想でしょ」

「オマエに何が分かって」


そういって膜を貼る大きな瞳を見るのが辛くてウェイバーを抱き締めた。なんでそんな頑張るの。気丈に振舞うの。強がりで意地っ張りなウェイバーはライダーが居なくなってから一人でそうしてきたっていうの。


「おま、はな」

「分かったような口きくの、もう嫌だから黙る。でも私が居る間は頼って欲しい」

「…」

「好きだから、いつまで一緒に居られるか分からないけど好きだから。大好きだから味方で居たいの」



決めていたんだ。馬鹿みたいな妄想で、もしウェイバーに合えたらどうしようかとずっと思っていた。なによりもまず都合のいい女になろうって。見方でいようって思ってたから。なんかもう名にコイツだれだよいやだもう、自己嫌悪、自己嫌悪。


「………………なあ、オマエさ。なんでそんなにボクにこだわるんだよ。笑えばいいだろ、時計塔の連中みたいにさ。馬鹿にすればいいだろ」

「馬鹿にするのは努力しない人にだけだよ。ウェイバーはあそこにいる誰よりも努力して頑張ってたの知ってるから、それに私のが情けないくらい努力なんてしてこなかったし」


だから馬鹿にするなら私だよ。そういって腕に込められた力が増す。ああもう私がなきそうだよ、本当に肝心なときにこれだから嫌なんだってば。必死に目から零れそうになる涙を堪える。


「私の事は忘れてくれたっていいよ。覚えてたとしても急に来た迷惑な奴程度でいい。…でもね、一番伝えたかった気持ちだけは覚えてて欲しいな」

「…忘れるって、」

「これからウェイバーはすごい才能を開花させるんだよ。本当にカッコいい人になるんだよ、だからふとした瞬間でいいから私がウェイバーを好きだったことは思い出してね。次元を超えて来ちゃうくらいウェイバーが好きなんだから」


馬鹿みたいでしょ。と軽く笑ったとき、背中にウェイバーの手が置かれて体が跳ねる。力こそ込められないものの、充分すぎるくらい心臓は高鳴る。



「ボクは、オマエのことは好きだと思ってない」

「知ってるよ」

「でも知りたい。オマエばっかボクの事を知ってるのはズルイだろ」



そして初めて腕に力が込められたから、まずは


「……まずは"友達"になってやっても、いい」



絆の土台を作ろうか。