…あまりに破天荒な突拍子の無い台詞に、その場に居た誰もが固まった。最初に戦ってた金髪美少女もやたらイケメンな泣き黒子さんも、怒るどころか呆れてる。なにこの白い空気。なんだかここに居るのが恥ずかしくなってきた…っ!


「ら、ライダーさん…?」

「先に名乗った心意気には、まぁ感服せんでもないが……その提案は承諾しかねる」


苦笑だ。いまイケメンさんの表情は苦笑だ。しかも目が笑ってないんだけど、ちょっと無言で責めるのやめてくれませんかね。顔は笑ってるのに眼光が超威嚇的なんですけど!さすがの春子ちゃんもコメントを控えなければいけませんねだって圧迫死しそうなう!


「俺が聖杯を捧げるのは、今生において誓いを交わした新たなる主君ただ一人だけ。断じて貴様ではないぞ、ライダー」

ちょ、ちょちょちょそんな責めないでよもう!普通に『いや、俺は遠慮させていただこう(キラリ)』みたいな感じでいいじゃん!そしたら今度はその隣に居た美少女が、お世辞の笑顔を浮かべることもなく真顔(のちょっと威嚇寄り)で詰め寄ってきた。


「戯れ事が過ぎたな征服王。騎士として許し難い侮辱だ」

「(ですよねー!)」


そりゃいきなりはい臣下になりますなんて誇り高い騎士様なら言える分けないよね。ってかウェイバーさん涙目。な、なにこれ可愛い!正に狼に取り囲まれた羊な顔だ。どんな表現。ライダーさんはむぅ、と唸っていかつい拳をごりごりこめかみに押し付けている。え、ウェイバーさんに対抗心?


「……待遇は応相談だが?」

「「くどい!」」


「こんの馬鹿っ…」


こんな奴のマスターと思われるのが屈辱だ、とウェイバーさんは顔を怒りのままにゆがめている。いやね、ウェイバーさん。ライダーさんもねきっと温和に済ませようとしているのよ。たしかにとてつもないムードクラッシャーだけどね!弟子入りしたいくらいすがすがしいけどね!



「重ねて言うなら――私もまた一人の王としてブリテン国を預かる身だ。いかなる大王といえども、臣下に降るわけにはいかぬ」

「ほう?ブリテンの王とな?
こりゃ驚いた。名にしおう騎士王が、こんな小娘だったとは」

「――その小娘の一太刀を浴びてみるか?征服王」


火 に 油 を 注 い だ よ !美少女なキシオウ?さんが剣を構えた。小娘の一太刀を本気で浴びせるらしい。いやちょっと嘘付かないでよ!絶対小娘じゃないじゃん!だって何年どころ前の人じゃないんだよ、もうすごい歳じゃん絶対ライダーさんより年上じゃん!あれ、関係あるのかこれ。


「こりゃー交渉決裂かぁ。勿体無いなぁ。残念だなぁ」


「ど〜すんだよぉ。征服とか何とか言いながら、けっきょく総スカンじゃないかよぉ……オマエ本気でセイバーとランサーを手下にできると思ってたのか?」

「いや、まぁ、"ものは試し"と言うではないか」

「"ものは試し"で真名バラしたンかい!?」

「はっはっは。良いではないか、余は隠し事は性に合わなくてなぁ。のう小娘」


「真名とやらの重要さも良く分かりませんのでねぇ。っていうかウェイバーさん殴るならあたしに!どうぞ思う存分殴ってくださいウェイバーさんの愛なら受け止められグフッ」

「オマエは黙れ頼むから!」


セイバーの近くにいた銀色の髪の女性が、ウェイバーの心中を察して哀れむように胸を痛めた。いくらか張り詰めていた空気が緩んだとき、



『そうか、よりにもよって貴様か』

地を這うような低くて怨念みたいな声がその場に居た者たちの鼓膜を震わせた。




 


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