「覚悟しろセイバー」

「それは私に獲られなかった時の話だぞ。ランサー」


二人の騎士らしき男女が、今正に矛を交えようとする矢先だ。いいのか本当にこれは。

神威の車輪は全く止まろうとはせずにその清澄場目掛けて突っ込んでいくではあらぬか!ちょ、ライダーさん空気!空気を読んでお願いします!!
チキンセンサーは安定の稼働中なう。


「――!?」


明らかに場違いな轟音。当たり前だけど、その場に居た人々の視線はイン・オブ・眼中。
しかも緊張とアレ痛の挟み撃ち!うわ止めてなんかよくないものが出てきそう!!


「……戦車……?」


御名答です。
こんなバチバチしてインザスカーイできる戦車なんて素晴らしいが常識ハズレなんてもんじゃない。
どうだその証拠にウェイバーさん今目が点だぞ!チビッちゃうかもしれないわよ!


「ウェ、ウェウェイバーさん…、ひひひひもG食べますかひもG!」

「……」

へんじがない ただのしかばねのようだ。

いつもなら華麗なツッコミを放出してくれるのに!何だこのライダーさんの御顔は!なんですがすがしい顔してるのさ!
しかもあろうことか二人の上を旋回した後、ど真ん中で着陸しやがった。


え。死亡フラグ?


「双方、武器を収めよ。王の御前である!」

「ライダーさん!?」


なんという堂々とした態度!ここまでくればさすがお父様としか言いようが無いわ!
よし、この春子めはお父様について行きます!!


「我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した」

「かっ。重ねて申ーす!!私は春子・ベルベット!此度の聖杯戦争ではライダーのマスターの妻のクラスを得て現れムグァッ」


ワナワナと震えるウェイバーさんに口を押さえつけられて、言葉がちょんぎれた。
――来るぞ。これは来るぞ。



「何を――考えてやがりますかこの馬ッ鹿共はあああ!!」


声を張り上げて叫んだウェイバーさんは、べしっとライダーさんのデコピン一撃に沈んだ。
これではっきりした。ライダーさんの中指は紛いも無い凶器だ。


「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある。
うぬら各々が聖杯に何を期するのかは知らぬ。だが一度考えてみよ。その願望、天地を喰らう大望に比してなお、まだ重いものであるのかどうか」

「貴様――何が言いたい?」

「うむ。噛み砕いて言うとだな」


一呼吸置いてライダーさんは、



「ひとつ我が軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか?さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存でおる」


なんていけしゃあしゃあと答えた。

――あのね、ライダーさん。それは無茶だと思うの。


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