ガチガチと忙しなく歯を打ち鳴らすウェイバーさん。冷たい鉄筋の橋の上、命綱もなしに手足のみでしがみつく姿は中々にシュールだ。


「ラ、イ、ダー、早く……降りよう、ここ……早く!」

「見張るには誂え向きの場所だ。まぁ今暫くは高みの見物と洒落込もうではないか」

「見張るって、何をですか?」

「ん?ああ、かれこれ四時間程前から気配のあったサーヴァントでな。どうやらあそこの公園で決闘を行うつもりらしい」

「え、どこですか」


ぐびりと余裕綽々とワインを煽りながら、ライダーは答えた。
だから出かけると言っていたのか。やたらと外を回ると思ったらそれだったらしい。

ていうかライダーさんの視力はんぱない。なんだよ豆ほどにも人が見えないんですが!


「オマエ…なんでそんな余裕そうな顔してるんだよ…」

「高いところ好きですんで!てへっ」

「…うぅ、帰りたい…。……だいたい、なんで監視するばかりで仕掛けないんだよぉ」


一刻も早くここを降りたいのか、ウェイバーさんがそういった。
ライダーさんはふんと鼻を鳴らして答える。鼻息が凄い。


「アレは明らかに誘っておる。ああもあからさまに気配を振りまいていれば、気付かぬ方がおかしい。
すでに余だけではなく、他のサーヴァントたちも奴を見つけて様子を窺っていることだろう。

頬っておけば、いずれ気の短いマスターが痺れを切らせて仕掛けるやも知れん。それを期待して成り行きを見守る手だな」


ライダーさんの作戦に、ウェイバーさんは驚いたような顔で頷いた。
非の打ち所のない作戦であることはあたしにも分かる。分かる、けど…。


「ライダーさん」

「何だ小娘」

「い、いつまでここで見守るつもりですか…?」

「どうした、小娘まで怖いと申すか」

「そうじゃなくてですね!あの、トイレに…行きたくてですね!」


言い忘れたがあたし、アレ痛が酷いんですよ。二日目なんですよ!!
今にも叫んで飛び降りて地平線の彼方に走り出したいのを堪えているんですよ!


「ふむ、そうか…。ならば行くが良い、余の戦車で近場のコンビニとやらに運んでやろう」

「お、降りる!いや、降ろせ!ボクも行く!も、もう嫌!」

「まぁ待て。落ち着きのない奴め。座して待つのも戦のうちだぞ」

「それじゃあ行ってきますねウェイバーさん!」

「お、おい待て頼むうぅぅ…!」

「待ったらあたしのお腹が破裂します!!アデュー!」



すたっとかつてない程の勢いで飛び降りて戦車に降り立つと、物凄い速さで宙を駆け抜ける。
去り際のウェイバーさんの顔が半泣きで縋るような眼差しに危なく上からも血が出るところだった…!




「ぐああああああ痛いいいいいい!!!ちょ、なるべく急いでください!死ぬッ!」




ウェイバーさんとの限りある時間を割くとは…なんと憎い生理めぇえええ!!


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