あたしは今信じられないものを見た。 このどうしようもない感動を何に例えようか、そう。これに匹敵するのはウェイバーさんがピンクのパンツを履いているような―― 「口に出てるぞ変態」 「やだ恥ずかしいきゃっはー!」 「オマエに羞恥心なんてないだろ馬鹿」 「そんなことありまっせーん!」 空が大きく口を開いて、出てくるのは黒い馬が二頭とそれに引かれるなんだ…ベランダ? 「ウェイバーさんベランダですベランダが降りてきます!」 「ベッ……!あれは戦車だ馬鹿!」 「チャリオット?」 「余の宝具である」 「なるほど!聖杯戦争ってスケールでか!」 「はっはっは!!気に入ったか小娘!」 「おうともさ!」 「下らない話ばっかりしてないで行くぞ」 「ウェイバーさんが嫉妬…っ!」 「違うわ!」 激しい稲光と共に降り立った黒い戦車に乗り込んだライダーさんが、あたしとウェイバーさんを引き上げる。 傾き始めた太陽と神聖な戦車は一枚の絵画のようにも見える。 「っておいライダー、こいつを連れて行くつもりなのか!?」 「当然であろう。小娘とて共に馳せる権利と言うものはある。ま、小娘が否とするなら話は別だが?」 「だ、駄目に決まってるだろ!オマエだって嫌だろ?死ぬかもしれないんだぞ!」 「何度も言ってます!あたしにはウェイバーさんを守り、ライダーさんの背中を見続ける使命があるんです!」 だから着いてきます!と高らかに宣言。 そうです、あたしはウェイバーさんの奥さん(になる)なんだから!夫と運命を共にするのはもうあれだ!こう、使命なんですよウェイバーさん! 「……だけど、」 「心配御無用!あたし車に八回轢かれかけてますけど生きてるんです!悪運の強さなら負けねえ!」 「不安要素濃いだろ!!」 「さあ行こくぞ!いざ出陣!」 「舌を噛むなよ小娘!」 「あいあいさー!」 「(…なんだこの疎外感は)」 ――イギリスが恋しい。 |