「ライダーさん、それは何の本ですか?」

「これは現代の戦闘機の写真と概要が乗ったマニュアルだ。中々便利な時代になったのう。故に自らの手で勝ち取る快楽を知らぬ。難儀な時代よのう」


悲しそうに眉を落とすライダーさんの言っている意味がよく分からなかったので、曖昧にだけ頷いた。
ウェイバーさんがなにやらおつかいに言ったので必然的にあたしとライダーさんが二人きりになる。おお、考えてみればこれは初めての機会では!


「ライダーさんはどんな人と戦ってきたんですか?」

「なんだ小娘、余の話を聞きたいと申すのか」

「はい!」

「良い良い。余の生涯を語ってやろう、小娘には広大で豊かな大地が想像出来るか?」


淡々と嬉々として話すライダーさんの、かつ征服王イスカンダルであったころの太古の昔の物語。
その口から零される言葉はどれも新鮮で不思議で興味の惹かれるものばかりだった。


きっとこの人の目には今もなお駆け抜けた大地が鮮明に映されるのだろう。



「思えば短くも満たされた人生であった」

「羨ましいです」

「何がだ?」

「あたしもライダーさんのように笑って死ねるでしょうか」

「それは小娘次第だろうて。まあ坊主を夫とするつもりであるなら困難な生涯になるだろうなあ」

「ウェイバーさんの隣で居られるならどんなに細くて脆い石橋も渡ります!」

「はっはっは、それはいい!このイスカンダル、感服したわい!」

「あたしの目標はあくまでウェイバーさんのお嫁さんです!目指せノーウェイバーノーライフ!あ、今もそうだ」

「実に愉快な夫妻である!」

「そこは幸せな夫婦って言ってくださいよー!」



楽しそうな話し声を扉を挟み、複雑な気分でウェイバーはその会話を聞いていた。
…入るタイミングを逃した。勝手な話を今すぐ乗り込み中断させてやりたいのは山々だが、何よりあの二人を相手にしたら疲労が二倍だ。

壁にへたり込み小さな声で文句を言うウェイバーの姿を白熱する二人は知る由もないのだった。


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