お昼時。
ライダーさんとウェイバーさんが何時もどおり、それぞれの趣味に耽っているときに珍しくあたしは暇を持て余すことなくせっせと手を動かしていた。
…一言で言うなら、寒いのだ。寒さゆえにかじかんだ手が痛い。だけどすぐ後ろに座るウェイバーさんを見てヒットポイントを回復!されていると願いながら再び作業を開始した。


「ふぇっくしゅい!」

「春子、先ほどから気になっていたんだが一体何を作っておる」

「セーターです」

「ほう。それは衣服だな」

「そうですよ、ウェイバーさんにあげるんです!」

「ボクにだったのか!?今すぐ止めろ」

「動き出したら止まらない!恋する乙女にブレーキなんてものはないの!」

「オマエの虚言はもう充分だ」

「へへーウェイバーさんが照れてますー」

「どこに照れる要素があるんだ!病院行け脳内花畑!」


なんですかなんですか、あたしが作るセーターが着られねえってんですか!泣くぞ!
無視作戦を決行してセーターとはまだ呼ぶには遠く及ばない代物を必死で編んでいく。…先が長いなあ。終わりが見えないなあ。よしマフラーにしよう。今からお前はマフラーだ。


「おい、その…セーターは」

「たった今これはマフラーになりました」

「どっちでもいい!兎に角それはちゃんと作れるんだろうな」

「あたしの腕を疑っておいでですか!ええいいですよどんなに要らないって言っても上げますからね!知りませんからね!」

「普通逆だろそれ!!」


まあ、上手く出来たら受け取ってやってもいいけどな。


ウェイバーさんがぽつりと呟いた。
え、え、今なんて!なんて言いましたかウェイバーさん!


「おおおおあああつつつつ、ついにデレ期が」

「来るか!受け取らないぞ!」

「いやですごめんなさい頑張ります!」

「寒いから貰うだけだぞ!完璧じゃないと捨てるからな!」

「そしたら拾って寝ているウェイバーさんの首に巻きつけます」

「怖いわ!!」


「ウェイバーさんを寒さから守るイコール命の危険が減るんです!ウェイバーさんの安全があたしの手に掛かっていると思って完璧でちょー素敵なマフラーにします!」

「…なんで命の危険に関係あるんだよ」

「いいですか、もしですよ。もし他のマスターだかなんだか知らない人と遭遇したとします。寒いんです。兎に角寒くて北風がぴゅーぴゅー吹いてるんです。
ウェイバーさんは寒さのあまりに震えて思考が回らず的確な命令を出せず、そして背後を取られたと知っても動けません!だけどそこにあたしのマフラーがあれば」

「長い上に100%ありえない妄想じゃんか!」

「なっ、人が必死に考えたのに…!」

「無駄なことに脳使うな馬鹿!」


ばしんと頭を叩いたウェイバーさん。ヒリヒリするけどこれも一つの愛の形!堪えてなんぼなのよ春子、きっとこの先に輝かしいデレ期があるはず!


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