「おい春子、」

「え、ウェウェウェイバーさん待った!今は待った!」

「は?何言って――」


ガチャリ。ドアノブが捻られて開いていく木製のドア。
ぽかんと一瞬固まったウェイバーの表情がみるみると耳まで赤くなっていった。
羞恥と、怒りによって。


「オマエは何をしてるんだあぁぁああ!!!」

「野暮なこと聞かないで下さいよ!見りゃ分かるとおり、お着替えです」

「知ってるわ!お前は何を着てるんだって聞いてるんだよ!」

「………、拾いました」

「目を見て言え嘘つき」

「だってウェイバーさんのセーターがベッドに落ちてたんですよ!?これはあたしの着替えと取るのが当然です」

「畳んであっただろ馬鹿!!」

「ソウデシタッケ?――仕方ない、ならば脱ぎます」

「は、オマエ何言」


がばっと。がばっと、何の躊躇いも無く服を脱ぎ去った春子。
男には無い女特有の白くて曲線のようになめらかな体。歳相応に膨らんだ胸。

それを初めて目にしたウェイバーは、出す言葉も無くただ呆然と立ちすくむだけだった。

そして己が見ている目の前で自分の服に腕を通し始めたところで、漸くウェイバーが口を開く。



「オマエは何を考えてるんだ!」

「え?」

「仮にも男の部屋で、男の前でそんな格好して、無防備すぎるだろ!自分を粗末に扱うな!」


心からの、本気の叱咤だった。

これが自分だったから何も起こりえなかったが、もしそれがただの男であったならどうだろう。
今彼女は涙を流しているのではないか。
声を荒げたウェイバーが肩で息を整えていると春子がにっこりと笑った。


「いいんです、ウェイバーさんは何もしないって分かってますから」


「あたしが嫌がることとかはしないんです。ウェイバーさんの前でだからこそ、ですよ」


ウェイバーが目を見開く。
それに、と付け足す春子に言葉に静かに耳を傾けた。

「ウェイバーさんになら襲われても何されても構わない!ていうか手出されなさ過ぎて不安です!他の女の人で満足しているのではないかと…!
浮気ですからね浮気!出したいなら遠慮しないで出してください!!」

「だれが出すか!!」



今度こそいつものように怒るとどかりとベッドに胡坐をかいたウェイバー。
その姿はどこか存在感の強いライダーにも似ている気がする。



「お前は救いようの無い変態だけど女として生まれた以上は自覚を持て、馬鹿」

「はい!誓ってウェイバーさんだけの体で居ることを宣言します!」

「しなくていいッ!」



だけど他の奴に見せるのも気分が悪い。

そう出かけた言葉をウェイバーは喉の奥へと引っ込めた。


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