朝食を片付け終えてウェイバーさんのベッドに腰掛ける。なんだかライダーさんはゲームの攻略本を真剣な様子で読んでいる。
ウェイバーさんと言えば小難しい本を眺めるものだから取り残されたあたしは暇と言うわけでして。


「ウェイバーさんその本なんですか?」

「魔術の事が書かれてる本だけど、オマエには分からないだろ」

「あたし英語だいきらいです」

「見てれば分かる」


こいつが英語ぺらぺらで秀才だなんて言ったら詐欺以外の何者でもない。
予想を裏切らない知能の低さにウェイバーは口角を上げて笑った。

「ウェイバーさんって魔術師なんですよね?魔法使えちゃうんですよね?」

「まあな」

「あたしもその恋の魔法に堕としたというわけですか…」

「はあ!?真剣な顔で意味のわからないことを言うな!」

「じゃあウェイバーさん何か魔法見せてくださいよ魔法!こう、ポンッボーンバキューンって感じの何かを!」

「だから意味わかんないってば!それに無駄な魔力を使うつもりは無い」

「えーなんでですかー」

「なんでも、だ!」


「坊主は魔力の絶対量が低い故、下手に減らし戦地に赴くような事が起こるのを危惧しておるのだ」


それまで攻略本に読みふけっていたライダーさんが突如として口を挟んできた。
すぐさまあたしにウィンクしてきたので、これがウェイバーさんに対する挑発なのだと鳥頭のあたしでもすぐに理解する。プライドの高いウェイバーさんがこれに黙っているはずが無い。

「嘆かわしいのう。余のマスターたる男が、たかが小娘一人に魅せる魔術の一つも持ち合わせていないとは」

「〜〜〜〜ああもううるさいな!やればいいんだろやれば!」

「それでこそウェイバーさん!きゃー痺れるうー!わーきゃー!」

「黙れ!良く見てろよ、」


たまたま置いてあった花瓶からまだ蕾の花を抜き取ると、ウェイバーはそれを床に置き一瞬だけ手を翳した。
すると蕾が開き、小ぶりだが可愛らしい花が顔を見せた。
初歩中の初歩の魔術だが、初めてそれを見る少女の心には大きな感動と衝撃がは走る。



「すごい!素敵!見ましたかライダーさん今花が咲きました花が!」

「ふん。この程度で喜ぶなんて平和だな」

「だって花が!…はっ。ウェイバーさんもしやこれをあたしに渡すために!愛しい人へのプレゼントですねそうなんですかありがとうございます!
あたしこれをウェイバーさんコレクションの一つに加えますね!」

「違うだろ!ていうかなんだよそのボクのコレクションて!」

「…、ヒミツです」

「なに口滑らしたみたいな顔してんだよ馬鹿」

「さて、と。あたしはやることがあるので」

「いきなり顔青くさせてんなよ!分かりやすいな!」



やばいやばい危なかった。
隠し撮りした写真とかこっそり頂いていたパンツとかが全て根こそぎ無くなるとろであった。ふー危ない危ない。
シラを切ろうと立ち去る春子にウェイバーはピクリと引きつった顔に青筋を浮かべた。



「その下らない思考と行動を直せ!!いい加減ボクだって」

「あたしの思考も行動も全てウェイバーさん関係なので安心してください!浮気なんて断じて」

「だから何の話だよ!!」





やけに疲れた様子で涙目になるウェイバーさんが可愛いです。


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