ピピピピッ。軽快な電子音とは裏腹に重々しい体。
白く細長い体温計には38.4の文字が表示されていた。


「…うー…死ぬぅ…」

「馬鹿。この程度で腐ってもお前が死ぬわけないだろ」

「死にます……ウェイバーさんの熱い抱擁とキッスが無いと死にます…」

「元気じゃんか!!」


ピシッと額につめたいジェルピタを貼ってくれたウェイバーさん。
おおお冷たいウェイバーさんがあたしを自ら看病してくれているうわあああ死ねるよこれ!本当に死んでしまうよ!
今すぐ口に出して小躍りしたいところだけど、いかんせんあたしの中に住み着いてくれちゃった病原菌は最強らしい。ギルさんめ、寒い中外に放置するからだ。


「へえっぷしょい!!」

「オッサン臭いな!」

「ずび…、ううう寒いです…」


ライダーさんが一時間ほどまえに不可視状態でどこかに行ってしまった今、あたしとうウェイバーさんは二人きりだ。
二人きり、なのに…っ!

「ウェイバーさんとイチャコラできないだなんて…」

「病人らしく黙れないのかオマエは」

「病人が静かだ何て、偏見です」

「ドヤ顔するな!!」


病人相手にもツッコミが健在だなんてさすがウェイバーさん。あたしの旦那様は常に理想どおりです!うふっ。
本来なら今すぐに飛びついているところだが足の指先を動かすことすらだるい上に、朝から見舞われる深刻な頭痛のお陰で適わない。


「ウェイバーさぁん…」

「今度はなんだ」

「うへへ…」

「うわ!な、なんだよいきなり!」

「少しくらいいいじゃないですかー」

「っ、…今回だけだからな。最後だぞ、絶対にしないからな!」

「はーい」


ウェイバーさんの手を握ると、悪態をつきながらも軽くだけ握り返してくれた。
ひんやりとした手が馴染んで暖かくなっていく感覚が心地よい。
ツンツンしながらもこういう弱った時に優しさを発揮するんだから、ウェイバーさんは飴と鞭の使い方がプロである。

とりあえず今日は割りと優しくしてくれるウェイバーさんに甘えるとしよう。


「ウェイバーさん…」

「うるさいぞ」

「チューしてくださいチュー」

「調子に乗るな!」


ごつんと頭を殴られた。
グーで!グーで女の子殴ったよいま!ウェイバーさんったらSなんだから…っ!きゅん!


「…あとその涎、引っ込めろ」

「あらいやだ」





あたしったらお下品でしたわおほほ。


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