…やばい、やばいぞあたし。これは完全に帰るタイミングを見失ったぞどうしよう。


「お前も飲め、赦してやるぞ」

「いやあたし未成年なんで…」

「知るか。何故成人前に酒を口に付けてはならぬ?」

「そっれは…法律で」

「法も何も所詮我の真似事だ。踏ん反り返る雑種共と我の位の違いすらも分からぬ阿呆と申すのか?
良いから飲め、それとも何だ?我の傍らでは酒は飲めぬと申すか」

「いえいえ滅相もありません!!」


ギルさん酔ってるんじゃないですかね!いつにも増してめんどくさい!
有無を言わさぬ威圧で酒を出されたからこれは飲むしかないのか。お酒の匂い嫌いなのにくそおおおイケメンめえええ!!




「…ほう、良い飲みっぷりではないか」

「………あれ。美味しい」

「貴様のような浅い舌でも含める代物だ」

「ふへへありがとうございまーす」



これは本当に美味しい。苺の風味がさっぱりして控えめな甘さで、どう表現したらいいんだろう。とにかく美味しい。
喉の渇きも手助けされて物凄い速さでビンを一本空にしてしまった。
…何だか熱い。頭がぐるぐるする。



「ふへ…」

「どうした」

「ふはっ、ふへへへへ…ふひ、ぎるさーあん」

「何だ、酔ったのか」

「よってないれすよー、うへっへ」

「…もう良い。帰るぞ」

「えー…まだ飲めますよー」

「黙れ。行くぞ春子」


余るほどのお金を出して酒場を後にすると、ギルさんは来たときのようにあたしの手首を引いて歩いた。
しかし考えてほしい。あたしの足はふらふらしておぼつかないのだ。

「ギルさん転びますよー」

「好きにしろ」

「もーすこしゆっくり歩いてくらさい」

「……知らん」

「ギールさーん」

「…うるさい狗め」


ぐっと体の浮遊感と共に、腰と膝裏に回されたギルさんの腕。
頭が回りません。深く考えるのはやめた。


「ありがとうございます、へへ」

「その緩んだ面を晒すなと言った筈だが」

「ごめーんなさい!」



だんだんと襲ってきた睡魔に負けて瞼を閉じると、やけに安心してそのまま眠りについた。

「…手のかかる決め手だ」




そう言って穏やかに笑ったギルガメッシュを知るのは、ぼんやりと浮かぶ月だけなのだろう。


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